【15年ぶりに指針変更】妊娠中の適正体重をご存知ですか?妊産婦の適正体重と胎児への影響を解説!

妊娠中の適正体重について、厚生労働省は2021年、妊娠中に必要な栄養素などをまとめている「妊産婦のための食生活指針」を15年ぶりに改訂しました。そこにはどのような狙いがあるのでしょう。 今回は具体的な変更点を中心に、妊娠中の体重管理と赤ちゃんへの影響についてお伝えしようと思います。

妊娠中の適正体重は増えた?減った?

冒頭の通り、厚生労働省では妊婦さんや赤ちゃんが健やかな毎日を過ごせるよう、2021年3月に「妊産婦のための食生活指針」を改訂しました。改訂により妊婦さんの体重増加の基準値が変わり、今まで妊婦検診で多く言われてきた「これ以上体重を増やさないで」という指導が大きく変わる内容です。 実際の改訂後の基準値を下記に掲載しました。「低体重~ふつう」の体格区分に対して大きく緩和がなされているのが分かります。

妊娠中の体重増加指導の目安(改定前と後)

                                                                                                             
妊娠前の体格区分妊娠前のBMI値以前の体重増加量の目安新しい体重増加量の目安
低体重(やせ)18.5未満9~12㎏12~15kg
ふつう18.5以上25.0未満7~12㎏10~13kg
肥満(1度)25.0以上30.0未満個別対応7~10kg
肥満(2度以上)30.0以上個別対応(上限5kgまでが目安)

出所:「妊産婦のための食生活指針(厚生労働省)」「妊娠中の体重増加指導の目安について(日本産科婦人科学会)」より抜粋して作成

新しい体重増加量の目安

新しい目安は日本産科婦人科学会にて集計された妊婦さん42万人のデータを基に作成されています。

瘦せ型妊婦さんの増加量目安は下限上限ともに3kg上がり、標準体型の妊婦さんも下限が3kg、上限も1kgの幅で基準値が上がっています。
これらの基準は妊婦さんと赤ちゃんにとって妊娠・出産のリスクが最も低くなる数値を基に再策定され、妊娠中の体重増加指導の新しい目安として使われています。

なぜ基準が変わったの?

瘦せ型妊婦さんと低出生体重児の増加

新指標改訂の背景には、日本で瘦せ型の妊婦さんが増えていること、それにより低出生体重児が増えているという現状があります。

日本の出生数は減っていますが、2,500g未満で生まれてくる赤ちゃんの割合は増加しています。低出生体重児の数も1980年から2000年にかけて出生数とは逆で増加し、その後横ばいで推移しています。下記に掲載した出生数と低出生体重で生まれてくる赤ちゃんの割合を示したグラフをご覧ください。2,500g未満での出生割合が増えている事が分かります。

出所:「低出生体重児-保健指導マニュアル(厚生労働省)」「出生数及び出生時体重2,500未満の出生割合の推移(厚生労働省)」を基にグラフ作成

妊婦さんの体重増加量が少ないのは日本人だけ

厚生労働省が基準見直しに乗り出したのには、諸外国の妊婦さんと比較して、日本人の妊婦さんだけ妊娠時の体重増加量が少ないという点も関連しています。

2017年、国立成育医療研究センターとハーバード大学公衆衛生大学院のグループが発表したレポートによれば、出生票データベースを使用した解析結果で、『日本人の出生児が最も体重が小さく、その原因が痩せ型や標準体型の妊婦さんの体重増加量が少ないことに起因していることが分かった』と発表されています。15の国の人種別に見ても体重増加量が少ないのは日本人だけで、生まれてくる赤ちゃんへの影響も心配されています。この事も日本が妊婦さんの体重について再検討する要因となりました。

出所:「Social and anthropometric factors explaining racial/ethnical differences in birth weight in the United States(米:Scientific Reports 2017)」

低出生体重児のリスク

低出生体重児の出生にリスクがある事も改訂の背景に関連します。ここからは低出生体重児のリスクについて、厚生労働省の保健指導マニュアルで取り上げられている、『死亡率』、『発育』、『発達』という観点で確認していきます。

死亡率が高い

医療の進歩により、低出生体重児の救命率は年々高まってきましたが、今も低体重であるほど死亡率が高い傾向は依然変わりがありません。またNICU(新生児集中治療管理室)などの受け入れ施設が用意できず病院側で受け入れができないといった事態が発生している点も関連して課題となっています。

出生体重別NICU死亡退院率(2008~2012年)
                                                                   
500g未満501~750g751~1000g1001~1250g1251~1500g合計
死亡率39.8%15.4%5.3%3.4%2.9%7.3%

出所:「低出生体重児-保健指導マニュアル(厚生労働省)」から一部抜粋

発育に影響する可能性がある

出生時の低体重による発育への影響は明確には分かっていません。ただ、出生後できるだけ早い期間で在胎期間中の発育と同等の体格基準値に近づけるよう対策を取っても、在胎期間同様の基準値に追いつけない場合には神経学的異常や発達障害のリスクが高まるとの研究結果が出ています。

また、出生後早期にキャッチアップした場合でも生活習慣病のリスクが高まるという見方もあると保健指導マニュアルで取り上げられています。いずれにしても低体重で生まれた赤ちゃんには、発育に関して注意しなければならない点がある事は間違いありません。

発達障害のリスクがある

低出生体重児は運動障害、知的障害などの合併症頻度が高い傾向があります。もちろん発達過程は一人一人で異なりますが、出生体重が低いほど、つかまり立ちや一人歩きといった発達指標の獲得が遅くなる傾向が高いようです。出生時に低体重であることは発達障害のリスクにも関連性があります。

赤ちゃんと妊婦さんの健康のために適正な体重管理が大切

妊娠は嬉しいものですが、様々なリスクもあるため体調管理が非常に大切な時期でもあります。赤ちゃんと妊婦さんご自身の健康のためにも、適正な体重を意識し、出産に備えていくことが重要です。

もしもご自身の体重が気になる、赤ちゃんの発育について心配といった方は検診や相談窓口で医師に相談してみましょう。安心して体重管理を行えるよう、各自治体でも相談窓口が設置されています。

そして、低出生体重児の出産となった場合にはNICUがあるかどうかなど、病院選びも非常に重要です。検診で赤ちゃんが小さいと言われて不安な妊婦さん、お腹の中の赤ちゃんについてもっと知りたいといった妊婦さんには出生前診断がという方法もあります。下記の記事でも発育不全について解説しておりますので、ご参考にしてみてください。

赤ちゃんが小さいと言われて不安な方へ「赤ちゃんが小さいと言われて不安。胎児発育不全について知りたい」

安心して出産するための新型出生前診断(NIPT)という選択肢

■妊娠中のリスク管理には出生前診断が有効です

妊娠すると心身が変化をはじめ、妊婦さんとお腹の赤ちゃんは様々な要因から病気になるリスクが高くなります。出生前診断は妊娠管理の上で有益な情報源となります。

胎児に異常が見受けられる場合には早期に準備ができますし、流産しやすいなどの特徴が見られる場合は個別の対応をすることが可能になります。
早期の発見には、出生前診断の中でも採血のみで高精度の検査が可能なNIPT(新型出生前診断)がおすすめです。

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