出生前診断のメリットとデメリット|あなたは出生前診断を受ける?

出生前診断は、妊娠中の胎児の健康状態や遺伝的な疾患を診断するための検査です。検査技術の進歩により検査を受ける妊婦さんは増えており、2020年に行われた調査では、何らかの出生前診断を受けた方の割合は、35歳未満で17.1%、35~39歳で34.7%、40歳以上では59.1%の人が受検した結果が出ています。

受ける人が増える一方で、「どんな検査なのか」「検査を受ける必要はあるのか」など、出生前診断をあまり知らない方も多いと思います。

出生前診断は、上手に使えば安心して出産まで過ごせたり、子どもを万全の状態でお迎えすることができたりとメリットも大きい検査です。しかし、出生前診断についての知識がないまま受診することで、かえって状況が悪くなってしまうことも考えられます。

このコラムでは、出生前診断の基本情報、それぞれのメリットとデメリットをご説明します。

ぜひ、最後までお読みいただき、自分が出生前診断を受けるべきか、またどの検査を受けるべきかをお考えください。

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出生前診断とは

出生前診断(出生前遺伝学的検査、出生前検査)とは妊娠中に子宮内の赤ちゃんが何らかの病気を持っているかどうか確認する検査です。

妊婦健診で行なっている超音波検査も出生前診断の一部ですが、出生前診断は主に、染色体異常の有無を確認する検査を指します。

出生前診断でわかる先天異常の例

出生前診断の種類によって検査できる先天異常は異なります。例えば以下のような染色体異常を検査することができます。

  • パトー症候群(13トリソミー):通常2本存在する13番染色体が3本に増える異常
  • エドワーズ症候群(18トリソミー):通常2本存在する18番染色体が3本に増える異常
  • ダウン症候群(21トリソミー):通常2本存在する21番染色体が3本に増える異常
  • ターナー症候群(モノソミーX):女性の性染色体XXが1本に減りXのみになる異常
  • トリプルエックス症候群(トリソミーX):女性の性染色体XXが3本に増えXXXになる異常
  • クラインフェルター症候群:男性の性染色体XYが1本増えXXYになる異常

他にも転座(染色体の一部が切断され、他の染色体に付着してしまう異常)や、欠失(染色体の一部が無い状態)などの染色体の構造異常も検査項目に含まれています。

どの染色体にどんな異常が発生するかなどによって、重篤な症状が出てしまったり、反対に症状が軽い場合もあります。

出生前診断の検査方法

検査方法も検査によって様々で、血液検査だけで判定できるNIPT(新型出生前診断)や母体血清マーカー検査(クアトロテスト)もあれば、確定診断となる羊水検査などはおなかに針を指して検査を行います。検査方法によってはリスクなどのデメリットもあるため、しっかりと内容を把握して、検査を決める必要があります。

出生前診断のメリット

出生前診断の最大のメリットは「赤ちゃんの状態を知ることができる」です。これは妊婦さんやパートナーの安心や、赤ちゃんを迎える準備に直結する重要な点です。、

メリット①赤ちゃんの状態を知ることで安心できる

赤ちゃんの状態を少しでも知っておくと、妊婦さんの心の安定に繋がります。

妊娠中は精神的に不安定になる方も多いです

妊娠中の妊婦さんの精神は不安定になりがちです。人によってはマタニティブルー、妊娠うつなど精神的に追い詰められてしまう方もいます。

妊娠中の不安は子どもの健康を心配していることが大きな要因の1つと考えられます。

妊婦さんへのアンケートによると「赤ちゃんがちゃんと育っているか」が最も心配なこと

ユニチャームのアンケートによると、妊婦さんが妊娠中に不安に思っていたことは「赤ちゃんがちゃんと育つのか」が56,2%、次いで「陣痛に耐えられるのか」「ちゃんとママになれるのか」となっています。

胎児がちゃんと育っているか、健康であるかということを知ることが出来る出生前診断はそういった妊婦さんの不安を取り除くために非常に重要な検査と言えます。

メリット②赤ちゃんの状態を知ることで事前に準備できる

結果の陽性・陰性を問わず、「結果を知ること」で行動的にも精神的にも新たに準備をすることができます。

赤ちゃんにとってよりよい環境を整えるための時間を作れます

陰性という結果を受け取るだけが出生前診断の目的ではありません。陽性の結果を知ることも、病気をもつ子どもを迎え入れる準備をすることに繋がります。

また、NICUと呼ばれる新生児の集中治療室のある病院で分娩の手筈を整えることで、合併症の治療を出生後すぐ行う事もできます。

これらの準備は出生前に赤ちゃんの疾患を把握している方の特権です。

実際に出生前診断を受け結果が陽性だった妊婦さんの考え方とは?

羊水検査で子どもがダウン症だと発覚した方は以下のように話しています。

「人それぞれとは思うんですけど」と前置きし、続けた。
「生まれた後で分かったら精神的にショックだと思います。
出生前診断で、もしダウン症と分かったら、いろいろ調べたり準備したりの期間がプラスになる。
(対応が)1日早ければ、子どもにとっては10日分、1カ月分になることもあると思います。

出典元:
yahoo!JAPAN「わが子がダウン症だったら?― 出生前診断を受けた夫妻の選択」
(2019年7月11日最終閲覧)

出生前診断のデメリット

知ることが絶対にメリットに繋がる訳ではありません。

知ることでかえって混乱してしまったり、検査でわからない病気もあるので、絶対に安心できるわけではなかったりとデメリットも存在します。

この章では知ることでかえって状況が悪くなってしまうケースを紹介します。

デメリット①知ることでかえって混乱する

陽性という結果を受け取って、妊婦さんやパートナが、どう対応すべきか混乱してしまうケースです。

検査を提供している病院の質は一定ではない

検査を実施している医療機関の中には、遺伝カウンセリングのような精神的なサポートが十分ではない施設もあり、妊婦さんが一人で苦しみを抱え込んでしまう場合もあります。

短い時間で決断を迫られることも

特に妊婦さんを苦しめるのは、産むか産まないかの決断です。

羊水検査のような検査実施時期が遅い検査を受けた場合、数週間で結論を出さなければなりません。

また、この時期は胎動が始まり、赤ちゃんが必死に生きようとしていると感じます。

そのような時期に産むか産まないか決断することで、精神的負担が大きくうつ状態になってしまう方もいます。

検査を受ける前に、検査ではどのような疾患が分かるのか、疾患のある子どもを育てるためには何が必要なのかなどを十分に理解した上で、もし結果が陽性の場合、自分たちはどんな決断を下すのか、事前に決めておくことをおすすめします。

デメリット②検査でわからない病気もある

出生前診断ではわからない病気もあります。

現状、出生前診断は染色体疾患が主な検査対象ですが、染色体異常は先天性疾患のうちの4分の1のみです。

例えば自閉症は出生前診断では検査できません。

自閉症は、同胞(患者さんの兄弟姉妹)の自閉症発症率は2%程度のため、遺伝が原因の遺伝性疾患ではなく、微妙な遺伝子の変化が偶然集まってしまったことが発病に関わっていると言われています。

そのため、出生前診断で陰性と診断を受けても、出生後に検査項目以外の疾患が判明する場合もあります。

デメリット③命の選別という意見

出生前診断には、中絶が可能な時期に赤ちゃんの先天異常を知ることができる検査があります。

そのため、障がい者団体から懸念が表明されていることも事実です。

1番の問題は、先天異常や出生前診断・検査の意義を詳しく知らされないままでいたり、強い不安を抱えたまま自己判断してしまうこと。

とくに出生前診断を受けようと考えている妊婦さんおよびパートナーは、検査や疾患について正しく理解することが重要です。

産婦人科では専門的なカウンセリングも行っておりますので、ぜひ相談を検討してみましょう。

出生前診断の種類とそれぞれのメリットデメリット

一口に出生前診断といっても、さまざま検査方法や検査があります。それぞれの妊婦さんの事情や置かれている状況に合わせて適切な検査が異なります。

この章では、各出生前診断の概要と、各検査のメリットとデメリットをご説明します。どの検査を受検するか決める参考にしてください。

確定診断

出生前診断には大きく分けて「確定診断」と「非確定診断」の二つに分類されます。

中でも確定診断は、流産や感染などのリスクが伴うというデメリットが存在するものの、検査の限界(うまく結果が出ないこと)を除けばほぼ100%という高い精度で検査ができるというメリットもあります。

確定診断には「羊水検査」と「絨毛検査」の2種類があります。

羊水検査

内容:お腹に針をさして羊水20mlを採取する検査です。穿刺針の影響でリスクのある検査(侵襲的検査)です。

検査時期:妊娠15~16週以降

検査結果がわかる時期:約2週間〜4週間

結果の出方例:陰性か陽性

精度:ほぼ100%の高い精度で「診断」ができるため確定診断と言われています。

リスク:流産の可能性(0.3%)、破水、子宮感染症などがあります。

費用:約15万円

特徴:絨毛検査に比べて簡単な手法なので検査実施施設数が多いです。絨毛検査に比べて流産のリスクが低いですが、検査実施時期は遅いので話し合う時間を上手に設け、受ける前に結論を出しておくことが必要です。

                   
メリットデメリット
・確定診断
・ほぼ100%の精度
・流産リスクがある
・時期が遅い
・費用がかかる

絨毛検査

内容:お腹に針をさして胎盤の一部である絨毛を採取する検査です。絨毛内に含まれている胎児細胞を利用して陰性か陽性か判断します。穿刺針の影響でリスクのある検査(侵襲的検査)です。

検査時期:妊娠15週~18週

検査結果がわかる時期:10日程度

結果の出方例:陰性か陽性か

精度:ほぼ100%の高い精度で「診断」ができるため確定診断と言われています。

リスク:流産の可能性(1%)、破水、子宮感染症などがあります。

費用:約15万円

特徴:羊水検査に比べて難しい手法なので検査実施施設数が少ないです。羊水検査に比べて検査実施時期が早いので診断結果を見た後にも話し合う時間を設けられますが、流産のリスクが1%と高いです。

                   
メリットデメリット
・確定診断
・ほぼ100%の精度
・流産リスクがある
・時期が遅い
・費用がかかる
・実施施設が限られる

非確定診断

「非確定診断」は「確定診断」と正反対の特徴を持っています。

非確定診断は確定診断と比べて検査精度が低いというデメリットがあるものの、リスクがほぼないというメリットがあります。

それぞれの検査のメリットを生かし、リスクの無い非確定検査を受検し、染色体異常の可能性を指摘された場合のみ精度の高い確定診断を受検するという流れが一般的です。

非確定検査はスクリーニング検査として利用されています。

母体血清マーカー検査(クアトロテスト)

内容:母体血に含まれる4種類の胎児由来の成分濃度から染色体異常の可能性を計算する血液検査

検査時期:妊娠15~18週

検査結果がわかる時期:10日程度

結果の出方例:確率(Ex.◯◯分の1の確率で染色体異常を認める)で結果が表示されるため、確率をどのように解釈するかが重要です。

精度:80%

費用:約3万円

特徴:費用はお手軽ですが、検査実施時期が遅く、かつ精度も低いです。

                   
メリットデメリット
・低リスク
・比較的安価
・結果が確率(解釈が難しい)
・時期が遅い

超音波検査

内容:胎児の首の後ろのむくみ(NT)の厚さなどの指標から染色体異常を確認します。他の遺伝学的な検査と異なり形態的な特徴から先天性疾患の可能性を算出します。

検査時期:妊娠初期と妊娠中期と妊娠後期(時期によって検査項目が異なる)

検査結果がわかる時期:1日(病院の検査項目による)

結果の出方例:確率(Ex.◯◯分の1の確率で染色体異常を認める)で結果が表示されるため、確率をどのように解釈するかが重要です。

精度:検査項目による

費用:約8千円〜6万円

特徴:形態的な特徴から検査をするため、染色体異常以外も検査項目です。しかし、NTを測定する際も特定の角度、拡大度で行うなど細かい技術が必要なため、通常の妊婦健診とは異なり、検査できる施設が限られています。

                   
メリットデメリット
・低リスク
・比較的安価
・結果が確率(解釈が難しい)
・受ける時期によって検査できるものが異なる

コンバインド検査

内容:クアトロテストとは別の種類の母体血清マーカー検査と超音波検査を組み合わせて染色体異常を判定する検査です。

検査時期:妊娠11週~13週

検査結果がわかる時期:翌日~約2週間

結果の出方例:確率(Ex.◯◯分の1の確率で染色体異常を認める)で結果が表示されるため、確率をどのように解釈するかが重要です。

精度:83%

費用:約3万円

特徴:母体血清マーカー検査(クアトロテスト)と比べると、検査実施時期が早く、かつ精度も高いです。

                   
メリットデメリット
・低リスク
・比較的安価
・結果が確率(解釈が難しい)

NIPT(新型出生前診断)

内容:母体の血液中に含まれている、胎児のDNA断片の量から染色体異常の可能性を算出する検査です。

検査時期:妊娠10週目以降

検査結果がわかる時期:1週間~2週間程度

結果の出方:陰性か陽性

精度:99%

費用:約20万円

特徴:従来の非確定診断に比べて、検査実施時期が早く、かつ検査精度が高い検査ですが、費用が約20万円と高額です。

                   
メリットデメリット
・低リスク
・時期が早い
・99%の高精度
・陽性時は確定検査が無料の場合も
・費用がかかる

各検査メリット・デメリットまとめ

出生前診断は確定検査と非確定検査、その方法も様々です。
ただし。検査によってお腹に針を刺すリスクがあったり、検査精度の違いなどがあります。

正しく検査のメリット・デメリットを理解して、納得して検査を受けることが大切です。

                                                                                                                                                                         
種類羊水検査絨毛検査クアトロテスト
(母体血清マーカーテスト)
超音波検査
(エコー検査)
コンバインド検査NIPT
(新型出生前診断)
検査時期妊娠15~16週以降妊娠15~18週妊娠15~18週妊娠初期~後期妊娠11週~13週妊娠10週以降
結果の分かる時期2~4週間10日程度10日程度1日翌日~2週間1週間~2週間
結果の出方陽性・陰性確率陽性・陰性
精度流産可能性(0.3%)
破水・子宮感染症
流産可能性(1%)
破水・子宮感染症
ほぼなし
費用15万円3万円8千~6万円3万円20万円
メリット確定診断
ほぼ100%の精度
低リスク
比較的安価
低リスク
早く検査可能
99%の高精度
デメリット流産リスクがある
時期が遅い
費用がかかる
流産リスクがある
時期が遅い
費用がかかる
施設が限られる
結果が確率のみ
時期が遅い
結果が確率のみ結果が確率のみ費用がかかる

中でも2013年より日本で臨床試験の開始されたNIPT(新型出生前診断)は低リスクかつ高精度での検査を叶える検査として注目を集めています。

欧米では妊婦検診の一部として妊婦さんに提供されており、日本でも一般診療化から現在では陽性時には確定診断である羊水検査が無償で受けられる場合もあるなど、受ける方が増えており、提供するクリニックも増えている検査です。

どの検査を受けようかと迷われている方には、安全面や精度という面からもNIPT(新型出生前診断)の検討をおすすめします。

出生前診断はメリットもデメリットもあるため自分たちで納得できる道を選ぶことが大切

出生前診断の最大の特徴は赤ちゃんが生まれてくる前に赤ちゃんの状態を「知ること」にあります。しかし「知ること」は捉え方によって良い影響も悪い影響ももたらします。

さらに「安易な中絶」「命の選別」「障害をお持ちの方の生きる権利の侵害」などの生命倫理的な問題点を指摘する方もいます。

出生前診断を受けるか受けないか決定するのは、子どものご両親であるお二人です。考え方は人それぞれですが、ご夫婦が納得した選択が一番大切で尊重されるべきでは無いでしょうか。

そのためにも、ご夫婦で慎重に話し合ってから予約しましょう。もし話し合っていく中で不安なことがあれば産科婦人科医に相談してみることをおすすめします。

安心して出産するための新型出生前診断(NIPT)という選択肢

■妊娠中のリスク管理には出生前診断が有効です

妊娠すると心身が変化をはじめ、妊婦さんとお腹の赤ちゃんは様々な要因から病気になるリスクが高くなります。出生前診断は妊娠管理の上で有益な情報源となります。

胎児に異常が見受けられる場合には早期に準備ができますし、流産しやすいなどの特徴が見られる場合は個別の対応をすることが可能になります。
早期の発見には、出生前診断の中でも採血のみで高精度の検査が可能なNIPT(新型出生前診断)がおすすめです。

■八重洲セムクリニック(東京)・奥野NIPTセンター(大阪 奥野病院横)のNIPTはこちら(新型出生前診断)
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