妊娠が判明して喜びを感じる反面、「もし赤ちゃんの健康に何かあったらどうしよう」と心配になることもありますよね。
特に妊婦さんの年齢が高いほど胎児に染色体疾患が見られる可能性も高くなります。染色体の数の変化で起こる胎児の症状のひとつにダウン症があります。
ダウン症は知っていても、どのような体や成長の特徴があるのか、育児や療育環境はどうなのか詳細を知らないまま漠然と将来に不安を感じている妊婦さんも多いと思います。
今回はダウン症にはどのような症状が見られるのかなどの基礎知識だけでなく、妊娠中の出生前診断でダウン症はいつわかるのかなどを説明していきます。
ダウン症とは
ダウン症とは正式にはダウン症候群といい、21番目の染色体が通常は2本あるところ、3本となる21トリソミーが生じることで起こる先天性の症候群です。
心や体の成長が比較的ゆっくりに進み、外見上も似たような特徴が見られます。
生まれてくる赤ちゃんの600人から800人の割合で見られると言われており、多くが両親の染色体に変化はないものの、胎児の染色体に偶然に変化が生じることで起こります。
見た目に特徴がある
ダウン症の人には特徴的な見た目があります。例えば扁平な鼻や耳の位置が低い、筋肉の緊張の低下などがあり特徴的な顔立ちが見られます。
さらに背中やお尻あたりに余分な皮膚があったり、猿線(単一手掌屈曲線)と呼ばれるまっすぐの線が手のひらにあるなども特徴です。
しかしこれらの見た目の特徴は体や心の健康には影響を及ぼさず、治療を行う必要もありません。
そしてこれら全ての特徴がダウン症の人全員に見られるわけでもなく、ひとつの個性ととらえることもできます。
主な症状に筋肉の緊張低下などがある
ダウン症に見られる主な症状には、以下のようなものがあります。
- 筋肉の緊張低下
- 関節が緩い
- 活気がない
- 小頭傾向
- 後頭部が扁平である
- 顔が丸く平坦である
- 鼻が短いなど
心や体の成長の発達においても、言語能力や運動能力に遅れはあるものの、個人差がありゆっくりと発達が進みます。
中には知的な障がいが見られる場合もありますが、軽度から重度までばらつきがあります。自閉的な行動が見られる場合もあります。
主な合併症に先天性の心疾患などがある
ダウン症は心臓や消化器に合併症を患っている場合も多く、主な合併症を挙げていきます。
先天性心疾患
- 心内膜床欠損症:心臓の4つの部屋を分ける弁と壁に異常があります。
- 心室中隔欠損症:左右の心室を分けている心室中隔に穴があいています。
消化器疾患
- 腸の形態異常
- ヒルシュスプルング病:消化器の動きを制御する細胞がないため、重い便秘症や腸閉塞などが起きる疾患です。手術することで治療することができます。
内分泌系疾患
- 甲状腺機能低下症:甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンのバランスが崩れてしまう疾患です。元気がなくなる、むくみやすくなるなどはっきりした症状がないため発見されにくい疾患です。ホルモン剤を飲んで治療します。
- 糖尿病:すい臓で作られているインスリンが不足し、血糖値が高くなる疾患です。食事の改善、運動を行う、または内服薬や注射薬による治療が行われます。
目と耳に関する疾患
- 白内障:水晶体が白く濁ってしまい視力が低下する疾患です。白く濁った部分を取り除き、眼内レンズと呼ばれる人工のレンズを入れることで治療します。
- 緑内障:目から入ってきた情報を脳に送る視神経に障害がおき、視野が狭くなる疾患です。治すことはできないので進行を遅らせる治療を行います。
- 難聴
- 耳の感染症
筋肉と骨の疾患
- 第1頸椎と第2頸椎の連結が不安定
- 関節が緩い
など
ダウン症ではこれらの症状や合併症に対して、年齢や発達段階に応じた検査や治療が必要になっていきます。
出生前診断でダウン症はいつからわかるのか
ダウン症には様々な症状や合併症が見られることを理解すると、妊娠中から検査をしてダウン症の可能性を事前に知ることができないかと思いますよね。
妊娠中からわかれば出生後の育児や療育に対して準備をすることもできるからです。
妊娠中からダウン症かどうかの可能性を知るためには、出生前診断(出生前検査、出生前遺伝学的検査)を受ける必要があります。
出生前診断をすることでダウン症など染色体の数の異常などによって生じる疾患の可能性を知ることができます。
胎児にダウン症の可能性があるどうかは、主に以下の出生前診断の検査で知ることができます。
非確定検査(この結果だけでは診断が確定できない検査)
- NIPT:妊娠10週以降
- 母体血清マーカー検査:妊娠15週〜21週
- コンバインド検査:妊娠11週〜13週
確定検査(この結果だけで診断が確定できる検査)
- 絨毛検査:妊娠11週〜15週
- 羊水検査:妊娠15〜18週
特に最近受検者が多いのがNIPT(新型出生前診断)です。
これは妊婦さんの採血のみで検査ができるため妊婦さんや胎児に与えるリスクが少なく、検査の精度も高いのが特徴です。
この検査では胎児がダウン症である確率が陽性または陰性、もしくは判定保留で出ます。ただし検査でダウン症の陽性が出ても、それが確定的な診断にはなりません。
本当にダウン症であるかどうか診断を確定するためには羊水検査などの確定検査を受ける必要があります。
NIPT受検に際しては妊婦さんに条件を設けている学会認定施設や特に年齢制限などの条件を設けていない認定以外の施設があります。
またその他の検査に関しても実施される時期や条件、調べられる疾患なども異なるため、十分な情報提供と専門家による遺伝カウンセリングを受けてから検査を受けるかどうかを判断することをお勧めします。
高齢出産になるとダウン症となる確率が高くなる
いわゆる妊婦さんの年齢が35歳以上になる高齢出産になるとダウン症などの染色体の異常が起こりやすくなります。
原因として卵子の質の低下によって染色体の分裂の段階で異常が起きることなどが挙げられます。
他にもエドワーズ症候群(18番染色体が3本存在する染色体異常)や、パトー症候群(13番染色体が3本存在する染色体異常)などの発症率が上がったり、染色体異常が原因で受精卵の段階で流産しやすくなります。
ダウン症の発症確率として妊婦さんの年齢が20歳の場合は1/2000、35歳の場合は1/365、40歳の場合で1/100と年齢と共に確率は高まります。
特に高齢出産と呼ばれる35歳以降になると確率が急激に高くなると言われています。
出生前診断を受ける理由は様々
女性の晩婚化や晩産化に伴い、高齢で妊娠出産する人が増えると高齢出産で確率が高まるダウン症などの疾患などないか事前に知るために出生前診断を受ける人も少なくありません。
一方で、はじめからどんな出生前診断も受けないと決めている夫婦もいます。
出生前診断を受ける人の中には、
- 「高齢妊娠だとダウン症の可能性が高いとネットで見たから」
- 「不妊治療を受けている友人から聞いたから」
- 「妊婦健診で行った超音波検査(エコー検査)で産婦人科の医師にNTと呼ばれる首の後ろのむくみを指摘されたから」
こうした理由を元に検査を受ける人も多いです。
そして中にはダウン症などの疾患の可能性があっても夫婦で協力して育児をしていくことを決めた、という夫婦もいます。
出生前診断を受ける理由や結果の解釈の仕方、対処方法はそれぞれですが、最も大切なのは事前に出生前診断を受けるかどうかを遺伝カウンセリングなど専門家の意見を参考にしながら夫婦で決められるかどうか、また検査の結果によってどう対処するのかも夫婦で自律的に決められるかどうかだといえるでしょう。
まとめ:ダウン症の可能性は妊娠10週以降の出生前診断でわかる
胎児にダウン症の可能性があるかどうかは、一般的にはまず妊娠10週以降に受けられるNIPTで陰性か陽性かがわかります。
陰性の場合はダウン症でない確率が高いと言えます。一方で、陽性の場合はNIPT検査結果は確定診断にはならないため、羊水検査などの確定診断を受ける必要があります。
羊水検査は実施する施設にもよりますが、妊娠15週以降に受けられ、そこで出た結果は確定診断になりますが、これも絶対とは言い切れず、ダウン症以外の染色体疾患や奇形などの疾患が出生時に見つかる場合もあります。
また、確定診断の結果によって妊娠を継続しない選択をした場合には、母体保護法によって定められている妊娠22週未満までに決断をしなければなりません。
ダウン症に見られる症状は個性でもあり、合併症も現在の医療で対処できるものも多く、ダウン症の人が健康的でいられる健康寿命も伸びています。
ダウン症の人や家族を取り巻く生活や療育環境などの情報や専門家による遺伝カウンセリング などを十分に受けた上で、出生前診断を受ける・受けない、検査の結果の解釈の仕方や対処などについて夫婦でよく話し合い対処を決めておくことが望ましいでしょう。
安心して出産するための新型出生前診断(NIPT)という選択肢
■妊娠中のリスク管理には出生前診断が有効です
妊娠すると心身が変化をはじめ、妊婦さんとお腹の赤ちゃんは様々な要因から病気になるリスクが高くなります。出生前診断は妊娠管理の上で有益な情報源となります。
胎児に異常が見受けられる場合には早期に準備ができますし、流産しやすいなどの特徴が見られる場合は個別の対応をすることが可能になります。
早期の発見には、出生前診断の中でも採血のみで高精度の検査が可能なNIPT(新型出生前診断)がおすすめです。
■八重洲セムクリニック(東京)・奥野NIPTセンター(大阪 奥野病院横)のNIPTはこちら(新型出生前診断)
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