羊水検査でわかることは?症状や受ける前に知っておきたいことを説明

「子どもが元気に育っているか」妊娠中、誰もが一度は抱える不安の1つです。

最近の研究では、年齢が高くなるにつれて、胎児のダウン症発症率が高まることがわかっており、特に35歳以上の高齢出産の方は心配な方も多いと思います。

そのように考える妊婦さんの中で、妊娠中に胎児の疾患を調べる出生前診断が話題となっています。

中でも、羊水検査は、1960年代から検査が運用されており、すでにご存知の妊婦さんも多いのではないでしょうか。

しかし、羊水検査という名前を知っていても、羊水検査の基礎知識、羊水検査で一体何がわかるのか、など疑問点もあると思います。

このコラムでは、「羊水検査の基礎知識」「羊水検査でわかること」など、羊水検査を受ける前に知っておきたいことをご説明します。

ぜひ、最後までご覧いただき、羊水検査について十分に理解を深めてください。

羊水検査とは

羊水検査とは、胎児の染色体異常の有無を事前に確認する出生前診断(出生前検査、出生前遺伝学的検査)の1種です。

羊水中では、赤ちゃんがおしっこをしたり、羊水を飲むなどしてお腹の外でも生きていける準備をしているため、羊水には胎児細胞が含まれています。

その胎児細胞を利用することで、染色体異常の有無をほぼ100%の精度で確認できる検査です。

羊水検査当日の流れと痛み

検査当日の流れは以下の通りです。

  1. 超音波検査(エコー検査)を用いて胎盤、胎児の位置や羊水量を確認し、羊水検査が可能か判断します。
  2. 可能であると判断されたら、感染予防のために消毒液でしっかり消毒した穿刺針を用いて羊水を20ml採取します。針を刺した部分に絆創膏を貼ります。
  3. その後、1時間程安静にしてから、日帰りまたは1日入院します。帰宅できるまでにかかる時間は病院の方針によって異なります。

針の痛みは人によって感じ方が異なります。羊膜に達する際、ズンと鈍い痛みがあり、違和感が3日ほど続いたという方もいれば、痛みをほとんど感じなかったという方もいます。

羊水検査のリスクと検査時期と費用

羊水検査は、羊水穿刺針の影響で流産(300人に1人の可能性)、破水、子宮内感染症、出血などのリスクを伴います。

流産の確率は、この時期の自然流産の確率と比べると、そこまで高い数字ではないと指摘する専門家もいます。

妊娠15週〜16週以降で検査が可能で、約2週間〜4週間後に検査結果が出ます。

FISH法と呼ばれる、約5日で結果がわかる簡易的な検査方法を併用する場合もあります。

費用は約15万円が相場です。健康保険などの適用は無いので全額自己負担になります。

羊水検査の検査の限界

羊水検査の精度はほぼ100%です。

しかし、検査の限界と呼ばれる検査結果が正常に出ない可能性があります。

染色体モザイク

染色体モザイクとは、正常な染色体と異常な染色体の2つが混ざっている状態です。

染色体モザイクには真性モザイクと偽性モザイクがあります。

真性モザイクとは、胎児が正常な染色体と異常な染色体の両方を持っている状態です。異常な染色体の割合によっては何らかの病気を発症する可能性があります。

偽性モザイクとは、染色体検査の培養段階で異常な染色体が発生してしまう状態です。この場合胎児に染色体異常はありません。

染色体モザイクが真性か偽性モザイクかは診断が難しいため、再検査が必要になります。

双子の場合

双子の場合、両方の羊水を採取できなかったり、採取ができたとしても互いの羊水が混ざり合い、検査が不明瞭になってしまう可能性があります。

検査の限界は全ての出生前診断に存在します。確実に検査ができる訳ではないということを理解しておきましょう。

出生前診断の種類

一口に出生前診断といってもさまざまな種類があります。大きく分けて、確定診断と非確定診断の2種類があります。

確定診断

確定診断とは、胎児細胞を検査できることから、ほぼ100%の精度で陰性か陽性か判断することができる検査です。

しかし、その精度を担保するために、針を用いて胎児細胞を採取しなければならないため、胎児や母体にリスクがある検査です。

確定診断は主に以下の2種類があります。

  • 羊水検査:胎児由来の細胞が含まれている羊水を検査します。
  • 絨毛検査:胎児由来の細胞が含まれている絨毛を検査します。

非確定診断

非確定診断とは胎児の染色体異常の可能性がわかる検査です。確定診断とは異なり、検査の精度は低いですが、リスクがほとんどない検査です。

そのため、通常、非確定診断をスクリーニング検査として受診し、染色体異常の可能性が疑われる場合のみ侵襲的な確定診断を受診する流れが一般的です。

非確定診断は主に以下の4種類があります。

  • 超音波検査:超音波を利用し、NTと呼ばれる首の後ろのむくみの厚さを測定します。
  • 母体血清マーカー検査 (クアトロテスト):母体の血液に含まれている4種類の成分の増減から染色体異常を判断します。採血のみで検査ができます。
  • コンバインド検査:2種類の成分を用いた母体血清マーカー検査と超音波検査を組み合わせた検査です。
  • NIPT (新型出生前診断):母体の血液に含まれている胎児由来のDNA断片から染色体異常を判断します。臨床研究として2013年に導入された新しい検査です。

それぞれの検査によって検査が実施される妊娠週数、費用、精度、検査項目などが違いがあります。どの検査を選択するべきかはご夫婦の置かれている状況によって異なります。

出生前診断の種類については以前コラムで紹介しておりますのであわせてご覧ください。

出生前診断の種類や検査内容とは?わかりやすく解説!

羊水検査でわかること

羊水検査では染色体の異常が分かります。

通常、染色体は全部で46本あり、2本1対で存在しています。これらの染色体は母親と父親から半分ずつ受け取った遺伝情報が書き込まれています。

44本(22対)は常染色体、2本(1対)は性染色体で男性がXY、女性がXXの染色体を持っています。

しかし、陽性の場合、何らかの要因で染色体に数的異常や構造的異常が起きています。

染色体異常には現在、根本的な治療法はなく支持療法が行われます。

出生前診断は子どもの先天異常を事前に知っておくことで、予想される合併症に対して対応する準備をしたり、赤ちゃんを迎えるための心の準備をするために行います。

染色体の数的異常

数的異常とは、通常2本1対あるはずの染色体数が1本になってしまうモノソミーと呼ばれる数的異常や、3本になってしまうトリソミーなどがあります。

一般的に、染色体異常の原因は卵子の老化によるものだと言われています。

そのため、基本的に予防策はありません。

症状は、それぞれどの染色体に数的異常が発生するかで異なります。

21トリソミー(ダウン症候群)

常染色体のうち、21番染色体が3本存在するトリソミーです。ダウン症候群とも呼ばれています。

出生が確認されている染色体異常の約53%を占める頻度の高い染色体異常で、全出生児のうち約1,000人に1人の割合で発症します。

特徴的な顔つきや、さまざまな合併症が確認されています。

特に、体、精神、言語能力の成長が遅れること、心臓や消化器の先天異常、甲状腺疾患や糖尿病などの頻度が高いです。

他にも難聴、耳の感染症、角膜と網膜の異常から視覚障害、首の関節が不安定になることから筋力低下や麻痺、感染症と白血病のリスクもあります。

どの合併症がどの程度見られるかは個人差があり、上記の合併症のうち全てが発症するわけではありません。

平均寿命は約60歳と染色体異常の中では比較的長く、多くの方が成人できます。

18トリソミー(エドワーズ症候群)

常染色体の18番染色体が3本存在するトリソミーです。エドワーズ症候群とも呼ばれています。

出生が確認されている染色体異常の約13%を占めており、ダウン症候群についで2番目に頻度が高い染色体異常です。全出生児のうち約6,000人に1人の割合で発症します。

重篤な心疾患、特に動脈管開存症(生後すぐに閉じてしまうはずの動脈管が閉じずに残ってしまう疾患)と心室中隔欠損症(左右に分かれている心室の間の壁に穴が開いてしまう疾患)の頻度が高いです。

他に高頻度の合併症としては、肺、横隔膜、消化管、腹壁、腎臓、および尿管の形態的異常と、腹直筋ヘルニアなどがあげられます。

また、発達遅滞と機能障害もあります。どの合併症がどの程度見られるかは個人差があり、ここに書かれている全ての合併症にかかるわけではありません。

流産してしまうことも多く、生後1年まで生存する割合は10%未満です。

13トリソミー(パトー症候群)

常染色体の13番染色体が3本存在するトリソミーです。パトー症候群とも呼ばれます。

出生が確認されている染色体異常の中の約5%と、ダウン症候群、エドワーズ症候群に次いで3番目に多い染色体異常で5,000〜12,000人に1人の確率で発症しています。

特に高頻度で起こる症状としては、重度の知的障害、顔や手足の奇形、心疾患、難聴、生殖器の異常乳幼児期の無呼吸発作、発達障害などが挙げられます。

パトー症候群は出生前に流産してしまうことも少なくなくありません。また、病態にもよりますが、80%の赤ちゃんが生後1ヶ月以内に死亡し、1年生存率は10%未満と言われています。

モノソミーX(ターナー症候群)

女性の性染色体XXが1本になるモノソミーです。ターナー症候群とも呼ばれます。

性染色体の数的異常は合計で13%と18トリソミーの発症率に匹敵し、生まれてくる女児の約1,000人に1人の確率で発症しています。

頻度の高い症状としては、低身長、腺異形成、 奇形徴候などがあげられます。他にも不妊症や稀に知能障害などもあります

一般的に、適切な管理がなされていれば、長期予後に大きな問題はありません。

クラインフェルター症候群

男性の性染色体XYがXXYなどXが2つ以上存在する染色体異常です。約1,000人に1人の確率で発症します。

頻度の高い症状としては四肢細長、思春期来発遅延、精巣委縮、無精子症があげられます。また他にも女性化乳房が発生する可能性があります。

また言語能力と発語、読む能力に問題が発生する可能性があります。

転座

染色体の一部が切断され、他の染色体や同じ染色体の別部分に付着してしまう構造異常です。不均衡型転座とロバートソン転座の2つがあります。

不均衡型転座とは、両親のどちらかに均衡型転座の保因者(情報の入っている遺伝子の場所が変わっただけで、性質や見た目健康には問題がない状態の人)がおり、子に遺伝するタイミングで過不足が(不均衡)発生する可能性があります。

ロバートソン転座とは、両親どちらかが染色体の一部が欠損している状態で全部で45本しかない状態です。

そのままであれば健康上問題はないですが、子に遺伝するタイミングで21トリソミー、21モノソミー、14トリソミー、14モノソミーなどが発生する可能性があります。

この中で出生が確認されているのは21トリソミーだけです。

将来流産や不育症の原因になる可能性があります。

欠失

染色体の一部が欠けてしまうことを指します。何番目の染色体が欠失するかによって症状はさまざまですが、成長障害、てんかん、先天性心疾患などの可能性があります。

性別を教えてくれるかどうかは病院次第

羊水検査では全ての染色体の検査ができるため、技術上、性別を確認することは可能です。

しかし、病院によっては倫理的な観点から妊婦さんに性別を伝えていないこともあります。

性別も知っておきたいという方は事前に病院の先生に確認しておきましょう。

羊水検査を受ける前に知っておきたいこと

羊水検査は染色体異常全般を検査することができますが、診断することのできない疾患もあります。また、羊水検査は「安易な中絶に繋がる」などさまざまな意見もあります。

この章では、羊水検査を受けるに当たって知っておきたいことをご説明します。

羊水検査で全ての疾患がわかる訳では無い

羊水検査の検査項目は染色体異常のみになります。例えば自閉症などはさまざまな要因が重なっておこる疾患であるため、羊水検査の対象外になります。

また、知的障害も検査ではわからない場合があります。知的障害の原因は染色体異常以外にも、出生時の酸素不足、脳の圧迫などの事故や生後の高熱の後遺症などで起こる可能性があるためです。

安易な中絶の助長という批判

羊水検査などの出生前診断は人工妊娠中絶(12週以降は人工死産とも言う)を助長しているという意見があります。

中絶処置は、妊娠12週以前であれば吸引法や掻爬法を利用できますが、羊水検査は検査を受けられる週数が15週以降のため、人工的に子宮を広げ、陣痛を起こし出産します。

子どもを持った多くの人は自分の子どもを産みたいと強く望みます。

しかし、現実に、家庭のこと、今後の子どもの将来のことを考えるとどうしても育て上げることができないかもしれない、と矛盾した思いを持ちながら決断しています。

子どもを育てるのは両親です。ご両親の決断を否定することは誰にもできません。

羊水検査の受診を希望される場合は、夫婦でじっくり話し合って「納得」した状態で臨んでいただければと思います。

出典元:
LITALICO仕事ナビ「大人の知的障害とは?軽度から最重度までの特徴、原因や遺伝との関係、利用できる支援について解説します」
(2019年7月11日最終閲覧)
自閉症よりよい治療への手がかりを求めて東京大学医学部精神神経科監修「原因を明らかにするために」
(2019年7月11日最終閲覧)

羊水検査を受ける際は検査でわかることを理解した上で検査に臨みましょう

羊水検査でわかることは先天性疾患の25%を占める染色体異常です。また出生後に疾患にかかることもあります。

羊水検査を受ける前に不安に感じる部分は産婦人科の医師による遺伝カウンセリング を受けたり、誰かに相談することで解決しておきましょう。

安心して出産するための新型出生前診断(NIPT)という選択肢

■妊娠中のリスク管理には出生前診断が有効です

妊娠すると心身が変化をはじめ、妊婦さんとお腹の赤ちゃんは様々な要因から病気になるリスクが高くなります。出生前診断は妊娠管理の上で有益な情報源となります。

胎児に異常が見受けられる場合には早期に準備ができますし、流産しやすいなどの特徴が見られる場合は個別の対応をすることが可能になります。
早期の発見には、出生前診断の中でも採血のみで高精度の検査が可能なNIPT(新型出生前診断)がおすすめです。

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