妊婦検診での血液検査とは?検査内容と費用・注意点について解説

妊婦検診では、妊娠が順調に経過しているかを調べます。

妊娠がきっかけで健康状態が変化することがあり、胎児や母体のリスクになることもあるので、体調に問題ないと感じている場合でも検診が必要です。

妊婦検診には厚生労働省が決めている標準的な検診の流れがあり、医師の診察や超音波(エコー)検査のほかに、血液検査も行います。

このコラムでは、妊婦検診で受ける血液検査について、検査項目の意味や見方、費用を解説します。

妊婦検診で血液検査をする時期は3回

妊婦さんの体の状態をチェックするために、妊娠期間のあいだに3回血液検査をします。

  1. 妊娠初期に1回(妊娠15週まで)
  2. 妊娠中期に1回(妊娠24~35週のあいだ)
  3. 妊娠後期に1回(妊娠36週~出産まで)

の計3回行います。

血液検査を受けたあとの流れも確認しておきましょう

一般的な病院・クリニックで採血する場合、血液検査の結果はすぐにはわかりません。

結果を聞けるまでの日数は、1~2週間後など病院によって異なるので、採血されたときにいつ結果がわかるのか聞いておきましょう。

また、血液検査で異常値があった場合の対応も病院によって違うので、そちらも確認しておきましょう。

検査結果に異常があった場合、病院から呼び出しの電話がかかってくることもあります。

妊娠初期の血液検査で調べること

妊娠初期の血液検査は、最初の血液検査なので検査項目が多いです。

とくに、妊婦さんに感染症がないかをチェックすることが妊娠初期の血液検査のポイントです。

検査項目①:血算(けっさん)

血算(けっさん)とは、赤血球や白血球の数など血液の基本的な項目を調べる検査です。

妊娠中でないときの血液検査でもよく測られる項目です。

妊婦検診では貧血のチェックが重要で、貧血は主にヘモグロビン(Hb)の値でチェックします。

妊娠中の貧血の基準値は、ヘモグロビン 10 g/dL未満です。

また、白血球の数が増えている場合は、炎症性疾患や感染症の可能性があるので対応が必要です。

検査項目②:血糖、HbA1cヘモグロビンエーワンシー

血糖(BS)とHbA1cは、糖尿病を調べる検査項目です。

妊婦検診では、妊娠中に高血糖をきたす「妊娠糖尿病」のチェックが重要です。

目安として、血糖値が100 mg/dl以上だと検査に引っかかることに。

血液検査を1回行っただけの血糖値の結果では、糖尿病の診断とはならないので、さらに詳しい検査が必要になります。

検査項目③:血液型

血液型の検査では、一般的なABO血液型を調べるだけでなく、「Rhアールエイチ血液型」や「不規則抗体」という赤血球のタイプを調べます。

妊娠の際に血液型を確認するのは、分娩時に大量出血することがあるので輸血が必要な場合があるためと、「血液型不適合妊娠」が起きないか調べるためです。

血液型不適合妊娠とは、特定の赤血球のタイプが原因で、胎児と母体の血液が干渉し合ってしまい問題がおきることです。

検査項目④:甲状腺機能

妊娠がきっかけで、甲状腺の機能に異常が起きることがあるため、血液検査でも甲状腺の項目をチェックします。

血液検査の項目では、「TSH」が甲状腺機能の目安です。

TSHというホルモンは、甲状腺の働きを強める物質で、TSHの数値が上昇していると甲状腺機能が下がっているということを意味します。

妊娠初期の基準値は、TSH 2.5μU/ml未満なら問題ないとされます。

甲状腺機能低下症は流産、早産のリスクになります。

検査項目⑤:感染症の検査

妊婦さんが感染症にかかっていると、胎児への感染や先天異常を引き起こすリスクになるので、感染症の有無をチェックします。

妊婦検診での感染症の検査は、スクリーニングや簡易的な検査のものが多いので、検査に引っかかった場合は診断するためにより詳しい検査が必要になります。

そして感染症があると判断された場合、妊娠中に、治療や胎児への感染予防を行います。

ここからは、たくさんある感染症の検査項目をまとめて解説します。

妊娠初期にチェックする感染症のまとめ

妊娠初期の血液検査で、具体的にどんな感染症を調べるのかを解説します。

血液検査で調べられる感染症には、それぞれの感染症ごとに抗体や抗原など特有の検査項目があります。

また、厚生労働省が検査を推奨している感染症と、受診する病院によっては検査を勧められる感染症があります。

血液検査で抗体や抗原を調べることで、その感染症の免疫がある(≒その感染症にかかりにくい)かどうかや、今現在その感染症にかかっているかどうかを調べます。

B型肝炎

B型肝炎の検査項目は、「HBs抗原(HBsAg)」です。

HBs抗原が陽性(+)の場合、B型肝炎に感染しているので、詳しい検査が必要です。

C型肝炎

C型肝炎の検査項目は、「HCV抗体」です。

HCV抗体が陽性(+)の場合、過去にC型肝炎に感染していたか、もしくは現在C型肝炎に感染中です。

AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)

AIDS(後天性免疫不全症候群)の検査項目は、「HIV抗体」です。

AIDSの原因ウイルスであるHIVウイルスに感染していないか調べます。

梅毒

梅毒の検査は、梅毒血清反応(Wa-R)といいます。

血液検査の項目では、「STS」や「TPHA」と書かれている項目が梅毒の検査です。

陽性(+)の場合、梅毒に感染している可能性があります。

風疹ふうしん

風疹抗体を測って、風疹の免疫があるかどうか調べます。

風疹抗体のHI法の結果は、「16倍」、「32倍」などの書き方で出ます。

「16倍」以下の場合、風疹の免疫がない(弱い)ので、感染しないようによりいっそう注意が必要です。

成人T細胞性白血病(ATL)

成人T細胞性白血病(ATL)の検査項目は、「HTLV-1抗体」です。

成人T細胞性白血病の原因ウイルスである「HTLV-1」というウイルスに感染していないか調べます。

HTLV-1抗体は、妊娠30週までに行う検査なので、妊娠中期の血液検査で測る病院もあります。

ここまでが、厚生労働省が検査を推奨している主な感染症です。

ここからは、受診する病院によっては検査を勧められる感染症を解説します。

トキソプラズマ

病院によって、または妊婦さんが希望する場合、トキソプラズマも血液検査の項目に入ります。

トキソプラズマに免疫があるかどうかや、今現在感染しているかを調べる検査です。

ただし免疫をもっている方も感染中の方も少ないので、ほとんどの妊婦さんは普通に予防を心がけることになります。

サイトメガロウィルス

病院によって、または妊婦さんが希望する場合、サイトメガロウィルスも血液検査の項目に入ります。

ただしサイトメガロウィルスに対しては、ほとんどの方はすでに免疫をもっています。

妊娠中期の血液検査で調べること

妊娠中期に、2回目の血液検査を行います。

検査項目①:血液一般検査

妊娠初期の血液検査と同様に、血算や血糖をチェックします。

妊娠糖尿病のスクリーニング検査として、医療検査用の砂糖水を飲んでから採血する「50gグルコースチャレンジテスト(経口ブドウ糖負荷テスト)」を行う病院もあります。

また、コレステロールなど一般的な検査項目も確認します。

検査項目②:肝機能(肝臓系酵素の項目)

妊婦検診では肝臓系酵素のチェックが重要です。

妊娠によって、肝臓に異常をきたすことがあるためです。

肝臓の検査項目は、「AST(≒GOT)」、「ALT(≒GPT)」、「LDH」などです。

検査項目③:凝固検査(血液凝固系の項目)

妊娠によって、血液の凝固機能が影響を受けるので、血液凝固系の項目をチェックします。

凝固機能を測る検査項目は、凝固マーカーと呼ばれていて「PT」、「APTT」、「フィブリノーゲン」、「Dダイマー」などたくさんの種類があります。

血液検査では採血前の食事に気を付けましょう

血液検査の日より前に、病院の注意事項を聞いておくと、スムーズに採血を受けられます。

病院によっては、前日の夜9時以降の食事禁止、などの指示があることがありますので確認しておきましょう。

血液検査の前の食事を抜くように言われるのは、検査項目のうち「血糖値(BS)」と「中性脂肪(TG)」の値が食後に上昇し、結果の判断に影響するからです。

とくに血糖値の検査結果は妊婦さんにとって大切です。

採血前の1~2時間以内に食事をしてしまうと、採血時も血糖値は上がった状態です。砂糖の多い飲み物も、血糖値を上げるので注意しましょう。

妊婦検診の費用はどのくらいかかる?

妊婦検診を受ける病院の金額設定と、お住まいの市区町村の公費補助額によって、実際に支払う自己負担額は変わってきます。

検査項目が多い、妊娠初期の初回の受診・検査費用が最も高額で、目安として自己負担分で1万円前後です。

妊婦検診の医療費は病院によってさまざま

妊婦検診は自費診療です。

妊婦検診の金額設定はそれぞれの病院が決められるので、病院によって金額が異なります。

公費で補助される金額も、市区町村によって異なります

公費による補助制度は、お住まいの地域によって異なるので注意が必要です。

妊婦検診の公費補助は、「妊婦健康診査受診票」や「補助券」などさまざまな名称で呼ばれています。

そして、決められた必要項目の検査を受けられるチケット制度の地域と、補助金額が決まっている金券制度の地域があります。

「妊婦健康診査受診票」や「補助券」は、妊娠届を提出すると、母子健康手帳と一緒に受け取れます。

再検査になったときは追加で費用がかかります

検査で異常が見つかり、詳しく調べるために再検査になった場合は、追加で費用がかかります。

まとめ

妊婦検診での血液検査を解説しました。

妊婦さんの血液検査の項目は、基準値が妊娠していないときと違うこともあります。

検査結果を受け取ったあとでも、不安や疑問がある場合、かかりつけの医師に相談してみましょう。

安心して出産するための新型出生前診断(NIPT)という選択肢

■妊娠中のリスク管理には出生前診断が有効です

妊娠すると心身が変化をはじめ、妊婦さんとお腹の赤ちゃんは様々な要因から病気になるリスクが高くなります。出生前診断は妊娠管理の上で有益な情報源となります。

胎児に異常が見受けられる場合には早期に準備ができますし、流産しやすいなどの特徴が見られる場合は個別の対応をすることが可能になります。
早期の発見には、出生前診断の中でも採血のみで高精度の検査が可能なNIPT(新型出生前診断)がおすすめです。

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