今回は母体血清マーカー検査のクアトロテストについて説明します。
母体血清マーカー検査のクアトロテストとは
母体血清マーカー検査のクアトロテストは、妊婦さんの採血をして血液中に含まれる特定の4つの成分を調べ、胎児に21トリソミーや18トリソミー、開放性神経管奇形である確率を算出するスクリーニング検査です。
はじめにクアトロテストの特徴について挙げていきます。
特徴1:妊婦さんの血液中の4つの成分を測定する
母体血清マーカー検査のクアトロテストでは、血液中に含まれる以下の4つの成分を測定します。- AFP(α-フェトプロテイン)
- hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)
- uE3(非抱合型エストリオール)
- InhibinA(インヒビンA)
これらの成分はいずれも胎児や胎盤で作られている成分であり、妊娠中はそれぞれの成分の値が時間を経るなかで増えたり減ったりします。さらに胎児が検査対象の疾患を持っていた場合にも値に変動がみられます。
特徴2:年齢や妊娠週数などほかの因子も使って胎児が対象疾患に罹患している確率を出す
クアトロテストは上述の4つの成分を調べますが、そのほかにも以下の因子も合わせて妊婦さん一人ひとりの確率を割り出していくのが特徴です。- 年齢
- 妊娠週数
- 日本人の基準値
- 体重
- 家族歴
- インスリン依存性糖尿病の有無
特定の4つの成分に加えて様々な因子を合わせて計算することで、年齢だけではない、妊婦さん一人ひとりの確率を知ることができます。
特徴3:妊婦さんが高齢になるほどクアトロテストでは陽性になりやすい
クアトロテストは妊婦さんの年齢だけでなく、ほかの因子も合わせて胎児が対象の疾患に罹患しているかの確率を出すため、年齢だけに依存して得られる確率ではないという特徴があります。しかし妊婦さんが40歳を超える場合は、クアトロテストが年齢に依存しない検査であっても陽性になりやすいことが報告されています。
母体血清マーカー検査のクアトロテストでわかる胎児疾患
クアトロテストでは以下の3つの胎児疾患の確率がわかります。
- 21トリソミー(ダウン症候群)
- 18トリソミー(エドワーズ症候群)
- 開放性神経管奇形
21トリソミーは21番目の染色体数が1本多く3本になることが原因で起こり、18トリソミーも18番目の染色体数が3本になることで起こる染色体の疾患、症候群です。成長がゆっくりだったり心疾患などの合併症が見られるなどの特徴がありますが、症状の重症度や進行などには個人差があります。
一方で開放性神経管奇形は、開放性二分脊椎、無脳症とも言われ、胎児の神経管が正常につくられず脳や脊髄に障害が起きる病気です。
母体血清マーカー検査のクアトロテストを受ける時期は?
検査を受けるのに勧められる時期は妊娠15週〜17週頃までとされています。しかし実際は21週6日までクアトロテストを受けることができます。ただ検査結果が陽性となった場合に、確定検査である羊水検査を受ける可能性を考えると最低でも妊娠16〜17週までに受けることが勧められています。
クアトロテストを受ける時期が遅くなると、羊水検査を受けるか、妊娠継続などについて考える十分な時間的余裕がなくなってしまうため、検査を受ける時期については注意が必要です。検査時期に関しては検査を受ける医療機関によって異なる場合もあるため、事前に確認することをおすすめします。
母体血清マーカーのクアトロテストの検査結果と解釈の仕方
クアトロテストの検査結果は採血してから約10日後にわかります。
結果は妊婦さん一人ひとりの確率を比較し、その確率が高ければスクリーニング陽性、低ければスクリーニング陰性となります。上述のように年齢の高い妊婦さんほど母体血清マーカー検査のクアトロテストで陽性が出る確率が高くなる傾向があります。
結果は確率として報告される
具体的にクアトロテストの結果がどのように報告されるのかというと「1/500」のように確率で示されます。この「1/500(0.2%)」は同じ結果となった妊婦さんが500人いた場合、そのうちの1人(0.2%)が対象となる疾患に罹患している胎児を妊娠している可能性があることを指しています。反対に499人、99.8%にあたる妊婦さんには対象疾患の胎児を妊娠していないことになるわけです。ある調査では21トリソミーに関してはクアトロテストにおいて、19,112例のうち陽性となったのは9.22%で感度は86.67% 、特異度は90.96%と報告されています。
クリーニング陽性・陰性の解釈は絶対とは言い切れない
対象疾患には以下のようカットオフ値が設定されています。- 21トリソミー:1/295
- 18トリソミー:1/100
- 開放性神経管奇形:1/145
これらのカットオフ値が基準となり、基準値より高い場合はスクリニーング陽性、低い場合はスクリーニング陰性となります。しかしスクリーニングが陽性となっても胎児に対象疾患が必ず見られるわけでもなく、一方でスクリーニング陰性であっても対象疾患のある胎児ではないとも言い切れないと解釈する必要があります。
妊婦さんの年齢が35〜39歳の場合は約18%、40歳以上の場合が約40%がスクリーニング陽性になる可能性があると言われています。
さらに双子を妊娠しているときはどちらかの胎児が21トリソミーであることが推定される確率として報告され、18トリソミーの場合は双子を妊娠している場合は結果を出すことはできません。一方で開放性神経管奇形に関しては双子の妊娠のときも1人を妊娠しているときと同じく報告されます。
母体血清マーカー検査のクアトロテストで陽性が出たら?
クアトロテストで陽性の結果が出た場合には、確定診断を得るために羊水検査を受けるかどうか決める必要があります。
21トリソミー・18トリソミーの場合は羊水検査を検討
21トリソミー、18トリソミーで陽性となった場合、定診断を希望するときには羊水染色体分析を受ける必要があります。ただし、羊水検査を受ける時には流産の確率が約0.3%あることを前提に受けなければなりません。開放性神経管奇形の場合は画像診断と羊水検査で羊水中のAFPを調べる
開放性神経管奇形で陽性となった場合は、より詳しく検査をするために超音波検査などの画像診断をさらに行い、羊水検査では羊水の中に含まれるAFP(α-フェトプロテイン)値を調べます。AFPは胎児の肝臓で作られる成分で開放性神経管奇形にかかっている場合は羊水に含まれるAFP値が上がります。さらにAFP値を調べることで開放性神経管奇形が分かる確率は96%と言われています。
母体血清マーカー検査のクアトロテストの費用
検査費用は22,000円〜30,000円となり、医療機関によって費用は異なります。費用の内訳として初診や再診料、超音波検査、クアトロテスト費用が含まれているところが多いです。
まとめ
母体血清マーカー検査のクアトロテストは、妊娠中から胎児が21トリソミーや18トリソミー、開放性神経管奇形に罹患しているかの確率を予測する検査です。確率が高い(=陽性)か低い(=陰性)であるかのスクリーニング検査であり、結果はあくまでも非確定診断に当たることを前提に受ける必要があります。結果が陽性となった場合には確定診断を受けるために羊水検査の受検が勧められています。
クアトロテストは妊婦さんの年齢が上がるにつれて、陽性になる確率が高くなる検査でもあります。さらに遺伝学的検査であることを踏まえて、検査を受けるかどうか、検査後の結果をどのように解釈するかは専門家による遺伝カウンセリングを受けて十分考えた上で受検することをおすすめします。
参照URL
ラボコープ・ジャパン合同会社
http://www.labcorp.co.jp/general/quattro01.htmlラボコープ・ジャパン合同会社「母体血清マーカー検査 クアトロテスト
http://www.labcorp.co.jp/dl/01/G-AFP-004E.pdf兵庫医科大学病院産科婦人科出生前診断のご案内
https://www.prenatal-diagnosis.org/%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E6%96%B9%E6%B3%95%E3%81%AE%E9%81%B8%E6%8A%9E/%E6%AF%8D%E4%BD%93%E8%A1%80%E6%B8%85%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E6%A4%9C%E6%9F%BB/2)母体血清マーカーの意味するところ 日本産科婦人科学会雑誌第65巻第9号
http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=65/9/06509N0110.pdfセブンベルクリニック「クアトロテスト」
http://www.sevenbells.jp/pdf/seven_quattro_191001.pdfラボコープ・ジャパン合同会社「羊水αフェトプロテインおよび羊水アセチルコリンエステラーゼ」
http://www.labcorp.co.jp/medical/yosui02.html川口レディースクリニック
母体血清マーカー検査
東京慈恵会医科大学附属病院母子医療センター
https://www.hosp.jikei.ac.jp/boshiiryou/obgyn/examination.html安心して出産するための新型出生前診断(NIPT)という選択肢
■妊娠中のリスク管理には出生前診断が有効です
妊娠すると心身が変化をはじめ、妊婦さんとお腹の赤ちゃんは様々な要因から病気になるリスクが高くなります。出生前診断は妊娠管理の上で有益な情報源となります。
胎児に異常が見受けられる場合には早期に準備ができますし、流産しやすいなどの特徴が見られる場合は個別の対応をすることが可能になります。
早期の発見には、出生前診断の中でも採血のみで高精度の検査が可能なNIPT(新型出生前診断)がおすすめです。
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