高齢出産とダウン症確率の関係│出産・妊娠年齢の影響や妊娠中にできる検査や準備について

現在は晩婚化・晩産化が進み、いわゆる高齢出産と呼ばれる35歳以上で妊娠・出産をする女性も増えてきました。

そこで気になるが高齢出産における胎児の染色体疾患などの可能性についてです。

特に妊婦さんが高齢になるほど「ダウン症の発症リスクが高い」「流産の可能性が高い」などの情報を聞いたことがある人も少なくないはずです。

今回は高齢出産となる女性に向けて、胎児にダウン症の可能性がある確率は高齢出産だとどのくらい高まるのか、妊娠中からできることはあるのか、妊娠中に分かることや備えるべきことなどについて説明します。

20代の妊娠とダウン症の関係については「出生前診断を受ける20代の割合|ダウン症の確率や検査の留意点」をご覧ください。

ダウン症とは

ダウン症(21トリソミー)は正式にはダウン症候群ともいい、通常2本1対で存在している21番目の染色体が3本に増えてしまうことによって起こる様々な似た特徴を持った子どもたちの総称を指します。

ダウン症のほとんどが21番目の染色体が1本増えることで起こりる「標準型」ですが、他にも「モザイク型」「転座型」といって異なる理由から起こる場合もあるものの、発生頻度は標準型が95%となっています。

発生頻度は600〜800人に1人の割合でダウン症児が生まれると言われています。

実際に2016年に生まれたダウン症児は推定で2,208人と言われており、2010〜2016年の7年間において出生数は1年間で2,000〜2,200人前後と、増えても減ってもいない状態であることが予測されています。

ダウン症に見られる主な症状には、

  • 筋肉の緊張の度合いが低く、知的発達がゆっくりである
  • 特徴的な顔貌
  • 心臓の疾患・消化器系の疾患
  • 眼の疾患
  • 甲状腺機能低下症
  • 難聴

などがあります。

これらの症状全てが見られるわけではなく、成長のスピードや合併症の度合いも個人差があります。

染色体の治療をすることはできないものの、療育環境などの発達により、ダウン症の人の寿命は平均60歳を超えており、他の染色体異常を持つ人と比べて寿命が長いことも特徴のひとつです。

妊婦が高齢になるとダウン症児を妊娠する可能性が高まる

妊婦さんが高齢になるとダウン症児を妊娠する可能性は高まります。

その理由のひとつに女性の卵子の質の低下によって染色体の分裂に異常が起こりやすくなることが挙げられます。

ここでは妊婦さんの年齢ごとのダウン症の発生割合とダウン症が生じる理由について見てみましょう。

分娩時の年齢ごとのダウン症発症の割合

世界最大の臨床検査ネットワークLabCorpによると、妊婦さんの分娩時の年齢ごとダウン症発症割合は以下のように推移します。

分娩時年齢 ダウン症候群発症確率
45歳 1/21
44歳 1/28
43歳 1/38
42歳 1/50
41歳 1/66
40歳 1/86
39歳 1/112
38歳 1/145
37歳 1/186
36歳 1/236
35歳 1/297
34歳 1/365
33歳 1/442
32歳 1/526
31歳 1/613
30歳 1/700

※出所:LabCorpの情報を基に作成

反対に20代での妊娠でのダウン症確率は、25歳で1/1040、20歳で1/1177です

分娩時20歳の女性がダウン症児を出産する割合は1177人に1人ですが、45歳の場合は21人に1人となっています。

表から分かる通り、ダウン症の発症確率は妊婦さんの分娩時の年齢が高くなるにつれて上昇しています。

しかし実際にはダウン症の赤ちゃんはその8割が35歳以下の妊婦さんから生まれているとも言われており、これは高齢出産の数はもともと少なく出産全体を見ると35歳以下での出産が多いことが理由です。

ダウン症となる可能性を高める主な理由は卵子の老化

妊婦さんの分娩時の年齢が高くなるほど胎児がダウン症となる可能性が高まる主な理由は卵子の老化です。

女性の場合、母親の胎内にいる時に卵巣に一生分の卵子が作られ、その後生まれてから年齢を経るごとに卵子の数は減って質も低下していきます。

すると卵子の染色体やDNAにも影響を及ぼし、染色体の減数分裂が正常にいかないことで染色体の数の異常も起こりやすくなるのです。

卵子の老化が引き起こす染色体異常は精子と卵子が受精した後の受精卵の段階でも様々な影響を及ばします。

例えば受精卵が正常に育たず、育っても流産してしまうなどの場合も少なくありません。

日本産婦人科医会によると、臨床的に流産と診断された流産のうち、50~70%が染色体異常を原因とする流産だと言われています。

高齢出産となる妊婦さんが検査・対応できること

高齢出産になるとダウン症だけでなく、胎児には様々な先天的な異常が見つかりやすくなります。

ダウン症など染色体に異常が見られる場合は、妊娠中から染色体を直すことはできず、子どもに見られる合併症に対して治療を行い、安心して生活できるような療育環境を整える準備をすることが大切です。

さらに妊娠中はNIPTをはじめとした出生前診断を受けてダウン症の可能性を知り、親としての心構えを事前に学んでおいたり、他のダウン症の子どもを持つ家族から情報提供を受けたりすることもできます。

この章では高齢出産となる妊婦さんが妊娠中にできる2つの準備の方法をご紹介します。

①NIPTなど出生前診断を受けて胎児の染色体疾患の可能性を知る

出生前診断(出生前検査、出生前遺伝学的検査)とは胎児に染色体異常の有無や可能性を判定するために行われる検査です。

出生前診断は大きく分けて2種類の検査があります。

出生前診断には非確定検査と確定検査がある

出生前診断にはその検査の結果だけでは診断が確定できない非確定検査とその検査結果だけで診断が確定できる確定検査の2種類があります。

非確定検査

  • NIPT
  • 母体血清マーカーテスト
  • コンバインド検査

確定検査

  • 絨毛検査
  • 羊水検査

一般的な妊婦検診で染色体異常が疑われたり、これまで染色体異常のある胎児を妊娠したことがある場合などの条件が揃い、夫婦が検査を受けたいと希望した場合に多くは妊婦さんや胎児に侵襲の少ない非確定検査を受けることになります。

非確定検査でダウン症の可能性が高いと判定が出た場合に、次は診断を確定する羊水検査や絨毛検査が行われ、ダウン症や他の染色体疾患があるかどうかの確定診断が行われます。

出産予定日の年齢が35歳以上の場合、他の条件がなくても学会認定された施設でNIPT受検が可能であり、また認定以外の施設では年齢に関係なくNIPTが受検できるため最近ではNIPTを受ける高齢妊婦さんが増えています。

出生前診断が行われる時期や方法、リスク、費用などは検査によって異なるため専門家による十分な情報提供と遺伝カウンセリングを受けた上で検査を受けることをお勧めします。

出生前診断については他のコラムでご紹介していますので合わせてご覧ください。

【関連記事】
出生前診断の種類や検査内容とは?わかりやすく解説!
出生前診断のメリットとデメリット|あなたは出生前診断を受ける?

出生前診断を受ける理由は様々

出生前診断を受ける理由は妊婦さんによって異なります。

  • 「妊娠中に超音波(エコー)検査を受け、染色体異常の可能性を指摘され、不安な気持ちになったから」
  • 「不妊治療の末に授かった子どもだから、万全の準備をして迎えたい」

など妊婦さんが抱く理由は様々です。どのような理由であっても出生前診断を受ける前には、結果が陽性となった場合のことを考えて受けることが大切です。

結果が出てから対処を考えるのではより不安が強くなり自律した意思決定ができなくなる可能性もあります。

もし胎児にダウン症の可能性が高いと分かった場合に妊娠継続を希望する時には事前に安心して出産に望める病院を選んだり、ダウン症児の育児について情報を集めて準備をすることもできます。

ダウン症だと分かったら?出生前診断における問題点

出生前診断でもし胎児にダウン症などの染色体疾患が分かった場合、妊娠を継続しない選択をする人もいます。

この選択に対しては、「障がいを持つ人の生きる権利を侵害する」「命の選別」などの様々な意見があるのも確かです。

そして実際に検査結果が陽性の場合、妊娠を継続しない選択をする妊婦さんは約9割とも言われています。

ただし確定診断で出た結果も絶対とは言い切れず、また陰性が出ても全ての染色体や遺伝子の疾患が妊娠中に分かるのでもないことも知っておくべきでしょう。

そうした背景からも日本産科婦人科学会(日本産婦人科学会)などの関連学会は、出生前診断を受ける夫婦に対して専門家が十分な情報提供を行い、夫婦が自律して意思決定ができるよう支援する体制が不可欠だとしています。

②ダウン症など染色体疾患の特徴や療育、支援体制について情報収集しておく

ダウン症に限らず他の染色体疾患においても出生前診断で知りうる疾患について事前に特徴や療育、支援体制について情報を収集しておくことも可能です。

ダウン症は出生時より身体的な合併症を伴うことが多いため、出生後からの医療サポートが必要になり、その後も定期的な検診を受けるなど支援が欠かせません。

また医療だけでなく療育の分野でも理学療法士や言語聴覚士などによる支援を受けることで本来持つその子どもの能力を引き出すこともできます。

これらの情報を妊娠中から得るために以下の2つの方法をご紹介します。

①日本ダウン症協会の相談窓口を利用する

公益財団法人 日本ダウン症協会

日本ダウン症協会とはダウン症のある人たちとその家族、支援者からなる会員組織です。

特にダウン症児を育てた豊富な経験と知識をもつベテラン相談員さんに電話で相談にできるのが特徴です。

さらに、全国各地にその地域のダウン症サポート事情に詳しい相談員さんが在籍しており乳幼児の発達相談も行なっています。

公益財団法人日本ダウン症協会 相談支援事業
月曜日から金曜日の10:30~15:00
TEL:080-6590-1824

②ダウン症児を育てる親のブログなどから情報を得る

ダウン症児を育てる家族が育児の記録をブログに残している人もいます。

そのような当事者の情報から「合併症の治療過程」や「ダウン症児の日常生活」について詳しく知ることもできます。

子どもがどのように成長していくのか、また子育てを通じて、家族がどのように感じ成長していったのかなどより現実感のあるダウン症児の生活を知ることができるのが特徴でしょう。

③遺伝カウンセリングを受けて疾患や検査の結果の解釈について知る

「全国臨床遺伝専門医・指導医・指導責任医一覧」

遺伝カウンセリングとは、臨床遺伝専門医と呼ばれる臨床遺伝学の研修を3年以上行い、遺伝カウンセリングの経験を積んだ専門医によるカウンセリングのことです。

遺伝カウンセリングの目的は、医学的な知識をわかりやすく伝え、相談者自らの力で医療技術や医学情報を利用して問題を解決していけるよう、心理的なサポートを含めた支援を行うことにあります。

このような遺伝カウンセリング を行っている専門家は全国におり、上述の一覧で検索をして探すことができます。

出生前診断を受けるかどうか迷っている、どこで受検すればいいのかなども相談でき、また出生前診断を受ける施設で検査の前後に受けることも可能です。

それぞれの出生前診断を受けることで可能性が分かる胎児の染色体疾患のことや検査結果で陽性が出た場合にそれをどう解釈すべきなのかなどを相談し、それを参考に夫婦で検査を受けるか、受けた後の結果でどう対処するのかなどを話し合うことができます。

まとめ:ダウン症となる確率は高齢出産になるほど高まる。妊娠中からできることをしよう

妊婦さんが高齢になるほど胎児がダウン症となる確率は高まります。

そのような背景を理解し生まれてくる赤ちゃんの健康に不安や心配があれば、妊娠中から遺伝カウンセリングを受けて出生前診断を受検することもできます。

NIPTをはじめ出生前診断を受けるかどうか夫婦でよく話し合い、もし胎児がダウン症である可能性があれば事前にダウン症や療育環境などを調べて妊娠中から準備できることもあります。

妊婦さんが高齢になるほど胎児にはダウン症以外の染色体疾患が生じやすくなることを踏まえて出生前診断を受けるのか、または診断を受けずに出産を迎えるのか夫婦で決めておくことをお勧めします。

安心して出産するための新型出生前診断(NIPT)という選択肢

■妊娠中のリスク管理には出生前診断が有効です

妊娠すると心身が変化をはじめ、妊婦さんとお腹の赤ちゃんは様々な要因から病気になるリスクが高くなります。出生前診断は妊娠管理の上で有益な情報源となります。

胎児に異常が見受けられる場合には早期に準備ができますし、流産しやすいなどの特徴が見られる場合は個別の対応をすることが可能になります。
早期の発見には、出生前診断の中でも採血のみで高精度の検査が可能なNIPT(新型出生前診断)がおすすめです。

■八重洲セムクリニック(東京)・奥野NIPTセンター(大阪 奥野病院横)のNIPTはこちら(新型出生前診断)
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