妊娠中、赤ちゃんが病気や障害がなく、元気に生まれてきてくれるかどうか不安になったり、心配になることもありますよね。
そのように考える妊婦さんの中で、最近話題に上がっているのが「出生前診断」です。
出生前診断は、おなかの中の赤ちゃんの先天異常を調べる検査です。
出産前に、病気の有無を知ることで、治療の準備をしたり、分娩時に知るよりも、精神的な余裕を持つことができたり、赤ちゃんをお迎えする準備ができます。
しかし一口に出生前診断といえども、検査の方法によって検査結果の精度や、検査実施時期、費用など様々な違いがあります。
このコラムでは「出生前診断の検査方法」「それぞれの検査方法によって起こる違い」を説明します。
どの検査を選択するべきか、考える際にお役立てください。
出生前診断とは
出生前診断とは、冒頭でお伝えした通り、お腹の中の赤ちゃんの先天異常を調べる検査です。
出生前診断とは、出生前検査、出生前遺伝学的検査とも呼ばれます。
検査対象は、主に染色体異常が原因で起きる疾患です。
通常、染色体は2本1対で存在していますが、卵子の老化などの要因で、染色体の本数や、構造に異常が起きてしまうと、障害や、流産を引き起こします。
出生前診断は日々、臨床研究が進められており、最近では「新型出生前診断」という新しい検査が導入されました。
その結果、検査件数も大幅に増加し、妊婦さんの意識にも変化が生まれています。
染色体異常とは
染色体は通常、お母さんとお父さんの遺伝情報を半分ずつ受け継ぎ、2本対で存在しています。
しかし、卵子の老化などの原因で染色体の本数や、構造に異常が発生してしまうことがあります。これが染色体異常です。
具体的には、数的異常には、染色体が3本に増えるトリソミー、1本に減ってしまうモノソミーがあります。構造異常には、染色体の一部がかけてしまう欠失、染色体の一部分が、他の場所に付着してしまう転座などがあります。
現状、染色体異常を根本から治す方法はありません。
しかし、染色体異常が原因の合併症であれば治療ができます。頻度の高い合併症や、症状が重篤や軽度かは、どんな染色体異常が起こるかによって変わります。
確定診断の検査方法と検査の詳細
出生前診断は大きく分けて「確定診断」と「非確定診断」があります。
確定診断とは、胎児細胞を利用することで、染色体異常の有無について、診断を確定させることができる検査です。
一方で、流産や破水といったリスクを伴うというデメリットもあります。
確定診断には主に「絨毛検査」と「羊水検査」があります。
この章では、この2つの検査の方法と、検査の詳細についてご説明します。
羊水検査の方法と検査の詳細
羊水中では、胎児が羊水を飲んでおしっこをしているため、胎児由来の細胞が含まれています。
羊水検査は、この羊水を利用して染色体異常がないか検査します。
羊水を採取する際、超音波検査を用いて胎盤や羊水量、胎児の位置や姿勢をみて、羊水穿刺が可能か確認しながら、お腹に針をさして羊水穿刺を行います。
羊水穿刺後は、超音波検査で赤ちゃんの状態に異常がないか確認し、確認できたら、数十分〜数時間安静にしたのち帰宅します。中には1日入院する病院もあります。
採取した羊水を染色体検査する方法は、2種類あります。
1つ目は、G-band法と呼ばれる、2〜3週間かけて培養、染色、検査を行う検査法です。こちらの場合は、染色体異常の有無を確定診断することができます。
2つ目は、FISH法と呼ばれる、培養を行わない代わりに5日ほどで簡易的な結果がわかる検査法です。
こちらの場合、偽陽性や偽陰性(検査結果と実際の染色体異常の有無が異なる)がありますので、確定診断ではありません。
出典元:
羊水染色体分析およびRapid FISH(間期核FISH法) – 医療関係者向け情報 | Lab Corp Japan
羊水検査とは – 兵庫医科大学病院 出生前診断
(2019年7月29日最終閲覧)
羊水検査に「痛み」はあるのか
羊水検査の痛みに関しては人によって感じ方に違いがあります。
麻酔の有無や、使用する針の太さや、医師の技術、妊婦さんの痛みの耐性などによって痛みの感じ方は変動があります。
羊水検査の痛みに関しては、「妊婦さんがどのように感じているか」「医師はどのように説明しているか」などをコラムで詳しく説明しています。
こちらも合わせてご覧ください。
羊水検査の痛みに関する疑問を徹底解消!医師と検査を受けた方の声羊水検査の詳細
羊水検査の詳細は以下の通りです。
- 検査実施時期:妊娠15週〜16週以降に検査実施。検査後、G-band法の場合は2〜4週間、FISH法の場合は約5日で検査結果表示。
- 検査項目:全染色体の数的異常、構造的異常(欠失、転座)。
- 検査精度:ほぼ100%。
- 検査結果の表示方法:「陰性」または「陽性」。
- 検査のリスク:流産(1/300の確率)、破水、出血。
- 検査費用:約10万円〜20万円。
- 検査実施時期:妊娠11週〜14週に検査実施。検査後、G-band法の場合は2〜4週間後、FISH法の場合は約5日後に検査結果表示。
- 検査項目:全染色体の数的異常、構造的異常(欠失、転座)。
- 検査精度:ほぼ100%。
- 検査結果の表示方法:「陰性」または「陽性」。
- 検査のリスク:流産(1/100の確率)、破水、出血。
- 検査費用:約10万円〜20万円。
- 検査実施時期:妊娠15週〜18週に検査実施。検査後、約2週間で検査結果表示。
- 検査項目:21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、神経管閉鎖不全症。
- 検査精度:80%。
- 検査結果の表示方法:確率で表示。
- 検査のリスク:ほとんどなし。
- 検査費用:約2万円〜3万円。
- 検査実施時期:妊娠11週〜13週に検査実施。当日に検査結果表示。
- 検査項目:21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトー症候群)。
- 検査結果の表示方法:確率で表示。
- 検査のリスク:ほとんどなし。
- 検査費用:約2万円〜5万円。
- 検査実施時期:妊娠18週〜20週(中期ドック)または、妊娠28週〜31週(後期ドック)に検査実施。当日に検査結果表示。
- 検査項目:21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトー症候群)。
- 検査精度:80%。
- 検査結果の表示方法:確率で表示。
- 検査のリスク:ほとんどなし。
- 検査費用:約2万円〜5万円。
- 検査実施時期:妊娠11週〜13週に検査実施。検査後、約2週間で検査結果表示。
- 検査項目:21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)。
- 検査精度:83%。
- 検査結果の表示方法:確率で表示。
- 検査のリスク:ほとんどなし。
- 検査費用:約2万円〜5万円。
- 検査実施時期:妊娠10週以降に検査実施。検査後約2週間で検査結果表示。
- 検査項目:21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトー症候群)
- 検査精度:99.9%。
- 検査結果の表示方法:「陰性」または「陽性」と表示。
- 検査のリスク:ほとんどなし。
- 検査費用:約20万円。
特に気をつけたいのが、検査時期とリスクです。
検査時期は妊娠15週〜16週以降です。日本では22週以降は、妊娠中絶を行うことができないので、短い時間で赤ちゃんを「産むか」「中絶か」を話し合う必要があります。
また、検査にはリスクがあるので、結果を受け取る前に流産してしまう可能性もあります。羊水検査を受ける場合にはこの2点に留意して、検査を受けましょう。
絨毛検査の方法と検査の詳細
絨毛とは、胎盤の一部です。絨毛組織には胎児由来の成分が含まれています。
絨毛の採取方法は2種類あります。
1つ目はお腹に注射針を刺す経腹法、2つ目は腟~子宮頸管から絨毛生検鉗子という専用の器具を用いる経腟法です。
経腹法と経腟法のいずれを実施するかは、胎盤の位置によって決まります。
兵庫医科大学病院によると、胎盤が子宮の底部や前壁に付着している場合は、経腹法で検査を行います。
反対に、後壁や前壁でも頸管に近い部位に付着している場合は、経腟法で行います。
染色体検査は、羊水検査と同様に、FISH法またはG-band法を利用します。
出典元:
絨毛検査とは – 兵庫医科大学病院 出生前診断
周産期遺伝外来を受診する方へ 国立成育医療研究センター
(2019年7月29日最終閲覧)
絨毛検査の詳細
絨毛検査の詳細は以下の通りです。
特に気をつけたいのが、羊水検査と比較してリスクが高いという点です。検査時期は妊娠11週からと早い時期に検査が可能ですが、リスクは羊水検査よりも高いです。
出典元:
NIPTコンソーシアム:母体血胎児染色体検査の遺伝カウンセリング (2019年7月29日最終閲覧)
非確定診断の方法と検査の詳細
非確定診断とは、染色体異常の可能性までしか検査をすることができませんが、リスクが小さい検査です。
非確定診断を受けて、染色体異常の可能性が高い場合のみ、侵襲的な確定診断を受けて、診断を確定させる(スクリーニング検査として利用する)のが一般的な出生前診断の流れです。
非確定診断には「母体血清マーカー検査」「超音波検査」「コンバインド検査」「新型出生前診断(NIPT)」の4種類があります。
この章では、この4種類の検査の方法と、検査の詳細をご説明します。
母体血清マーカー検査(クアトロテスト)の方法
母体血清マーカー検査では妊婦さんの血液中に含まれる4つの成分(AFP、hCG、uE3、Inhibin A)を測定します。
これらの成分は赤ちゃんまたは胎盤で作られる成分です。これらの成分は赤ちゃんが染色体異常を持っている時に増減します。
成分だけでなく、年齢と4つの成分の値、体重、家族歴、インスリン依存性、糖尿病の有無などを総合的に判断します。
赤ちゃんがそれぞれの疾患であるかどうかについて、妊婦さん一人ひとりの確率を算出します。
出典元:
クアトロテスト™(母体血清マーカー検査) – 患者向け情報 | Lab Corp Japan
母体血清マーカー検査(クアトロマーカーテスト)の詳細
母体血清マーカー検査の詳細は以下の通りです。
検査の特徴は、他の検査よりも安いことです。
一方で、検査の結果が確率で表示されるので、解釈次第で次の行動が変わってしまいます。
どのくらいの確率だったら確定診断に進むのか、産むと決断するのかなどを話し合っておきましょう。
超音波検査の方法
人の耳では聞こえない周波数の音を超音波と言います。
超音波は、臓器に当たると反射する性質があるので、それを利用し反射した音を画像にすることで、体内の状態を観察できます。これが超音波検査です。
超音波検査は、胎児超音波検査、胎児ドックなど、様々な呼び名があります。
妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期、妊娠週数に応じて検査項目が異なりますので、それぞれに分けてご説明します。
妊娠初期に行う超音波検査の方法と詳細
妊娠初期は、NTと呼ばれる首の後ろのむくみを測定することで、染色体異常の確率が他の時期よりも高い精度で検査ができます。
妊婦健診でも超音波検査を行いますが、NTの測定には技術が必要であるため、通常の妊婦健診では正しく検査ができません。
他にも、検査の際は胎児の血流、絨毛(初期の胎盤)、臍帯(へその緒)、羊水量、鼻骨、静脈管(肝臓の中の血管)の観察、三尖弁(心臓の中の弁逆流の有無)、心拍数などのマーカーを検査します。
超音波検査の詳細は以下の通りです。
妊娠中期・後期に行う超音波検査の方法と詳細
妊娠中期の超音波検査は、赤ちゃんの頭から足の先までを確認し、全ての体の基本構造ができているかを確認します。そのため、検査項目は多岐に渡ります。
妊娠後期は、妊娠中期とほとんど同じ項目を再度検査します。
妊娠後期は、妊娠中期に比べて、妊娠週数が進んでいるので、よりはっきりと構造の異常を確認できます。
中期後期に行われる検査の項目は以下の通りです。
頭部:小脳、脳室などのサイズ、脳腫瘍、脳梁などの観察
顔 :眼球、鼻骨、口唇裂、歯槽裂など7項目
心臓:部屋が4つあるか、血管の付着位置など10項目
腹部:胃、腎臓、腸、横隔膜ヘルニア、膀胱など
四肢:手足左右、指5本づつ
臍帯、羊水、外性器など
出典元:
胎児ドッグ | 西川医院 | 大阪市阿倍野区の産婦人科・内科
(2019年8月1日最終閲覧)
超音波検査の詳細は以下の通りです。
コンバインド検査の方法
コンバインド検査とは、超音波検査と母体血清マーカー検査を併用して行う検査です。
妊娠初期に行うため、超音波検査は、妊娠初期超音波検査と同じ方法です。
母体血清マーカー検査は、通常より早い時期に行う関係で、2種類の成分に限定して検査を行います。
コンバインド検査の詳細
コンバインド検査の方法は以下の通りです。
コンバインド検査の特徴は超音波検査や、母体血清マーカー検査よりも精度が高いことです。
一方で、検査の結果は確率で表示されるため、どのように結果を解釈し、結果を受け取った後、どのように対応するか事前に話し合っておきましょう。
NIPT(新型出生前診断)の方法
母体の血液中には母体由来のDNAだけでなく、胎児由来のDNA(cell-freeDNA)断片が含まれています。
NIPTでは母体血を10〜20ml採血し、その後「次世代シークエンサー」という網羅的に塩基配列を読み込む機械で染色体検査をする新しい検査です。
もし、DNAの数が通常よりも多かったり、少なかったりする場合、染色体の数的異常が検出されます。
NIPT(新型出生前診断)の詳細
NIPTの詳細は以下の通りです。
NIPTの特徴は99.9%の高精度、リスクの低さ、検査実施時期の早さ、この3点を全て実現した点です。
従来の検査では、精度をとるか、リスクを抑えるかの2択でした。
一方で、現在検査を受けるには、条件があることに留意しておきましょう。
日本産科婦人科学会の指針では、対象の妊婦さんを高齢妊娠(35歳以上)の妊婦さんに限定しています。
また、実施施設に関しても、遺伝外来を設置したり、産婦人科専門医と小児科専門医の常勤など、体制の整った施設でのみ実施するべきであると見解を示しています。
中には、上記のような年齢制限などを設けず、検査を行なっている施設もあります。
条件についてもっと詳しく知りたい方は、以前コラムで詳しく説明していますので、合わせてご覧ください。
新型出生前診断を受ける条件とは?新指針の妊婦さんへの影響は?検査方法によって多種多様な出生前診断、あなたは受けますか?
出生前診断の検査方法は様々です。どの検査が適切かは、家族の状況によって異なります。
また、「命の選別」「安易な人工妊娠中絶の助長」などの倫理的な問題もあります。
もし、検査を希望される場合は、夫婦でよく話し合い、遺伝性疾患や出生前診断について十分に理解してから決断することが重要です。
不安なことがあれば、臨床遺伝専門医による、遺伝カウンセリングを受診予約するのも手です。
東京・大阪でNIPTを受診するならこちら
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2016年に日本で初めて無認可施設としてNIPTを提供し、日本国内の医療機関でNIPT総検査数10,000件を超える実績をもつ専門医療機関です。
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10,000件のカウンセリングを通して妊婦さん一人一人と向き合ってきた、出生前診断歴45年を超える産婦人科医かつ国際出生前診断学会の会員である医師が検査を担当します。
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陽性だった場合は羊水検査の実施まで責任を持って行います。他院で受ける必要はなく、その他紹介状やかかりつけ医への説明についてもご相談が可能です。
■検査会社の実績
累計検査数100,000件を超える実績を持つベリナタヘルス社へ検査を委託しています。「ベリナタ法」と呼ばれる独自のサンプリング技術によって、微小欠失まで調べることが可能です。
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血液検体の輸送は、WHOが規定する国際基準に従い国際医療輸送の専門企業が担当します。検体紛失や取り違いは1度もありません。
まずは医師によるカウンセリングにてお気軽にご相談ください。
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