胎児の身体にかたちの異常があることを胎児奇形と言います。顔や手足のかたちに異常がある外表奇形、心臓や腎臓などの内臓のかたちに異常がある内臓奇形があります。
胎児の奇形の原因は、感染要因、環境的要因、遺伝的要因の大きく分けて3つです。奇形の原因となる要因の中には、気をつけることでリスクを低くすることができるものもあります。
この記事ではそれぞれの要因の内容とどのようにすると奇形のリスクを軽減することができるのかを解説します。
感染要因
母親が細菌やウイルスに感染してしまい、その病原体が妊娠中の胎児に移動してしまうことで胎児奇形の原因になってしまうことがあります。胎児と母親を繋ぐ胎盤を通して、病原体が胎児に移動する感染形式を胎内感染と言われています。トキソプラズマ
妊娠中の母親がトキソプラズマ症を発症してしまうと、胎児に胎盤を伝って、トキソプラズマが感染し、先天性トキソプラズマ症という症状が現れることがあります。先天性トキソプラズマ症では脈絡網膜炎,水頭症,脳内石灰化,小頭症,痙攣などの神経を中心とした症状が胎児にみられることがあります。妊娠後、生肉を食べてしまうことや動物に触れることで、トキソプラズマに感染する可能性があります。レバ刺し・ユッケ・馬刺し・生ハム・鳥刺しなどの食事は妊娠後には控えましょう。また、猫などの動物がトキソプラズマをもっていることもあるので、妊娠中には動物や動物のフンには触れないことも大切です。
他にも、手洗いには石鹸を使う、井戸水は煮沸して飲む、土いじりは手袋やマスクをすることなどのことにも注意しましょう。
風疹
風疹は先天性風疹症候群の原因になります。先天性風疹症候群は、白内障、心奇形(動脈管開存症など)、難聴などの症状が現れます。妊娠12週ごろから妊娠20週までは胎児の臓器形成にとても重要な時期です。妊娠初期にに風疹ウイルスに感染し、先天性風疹症候群を胎児が発症すると、複数の症状が現れます。妊娠中に風疹ウイルスに初感染をしてしまうと、胎児への感染や先天性風疹症候群を予防するための有効な手段は現状ありません。風疹ウイルスに対しての最も有効な予防方法は、妊娠前に風疹ワクチンを接種することです。
また、母親だけでなく、父親も予防接種をすることで、風疹の感染のリスクを下げることができます。特に、今父親の世代は風疹に対する抗体を持っていないことが社会的にも注目されています。妊娠前には夫婦で風疹ワクチンの摂取について確認してみましょう。
サイトメガロウイルス
一般的に多くの人はサイトメガロウイルスにすでに感染しているけれども、症状がない潜伏感染の状態にあります。このような既に感染者している母親から胎児へと胎内感染する確率は低いです。一方で、サイトメガロウイルスを心配しなくてはいけないのは、母親が妊娠中に初感染をした場合です。このときには、経胎盤的に胎児へと感染してしまうことがあります。サイトメガロウイルスに感染した胎児は、重症例では、小頭症や低出生体重児などになってしまうことがあります。また、乳幼児期に感音性難聴、精神発達遅滞、脳性麻痺、自閉症スペクトラム症などの症状も現れる可能性があります。
サイトメガロウイルスの胎児感染の予防方法や感染児の治療方法も確立はされていません。感染対策としては、妊娠中に、食器の共有をしないことや、(他の)乳幼児への唾液やオムツに触れた時にしっかり手を洗うことなどの様に衛生対策に気をつけることが大切です。
その他の感染症
単純ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、パルボウイルスB19、コクサッキーウイルス、EBウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、梅毒トレポネーマなどの感染症も胎盤から胎児に感染したり、分娩の時に胎児に感染してしまう可能性があります。それぞれの感染症がどのように胎児に移行したり、どのような症状が出るのかは異なりますが、心配のあるものや、少しでも身に覚えのあるものがありましたら、できるだけ早くかかりつけのお医者さんに相談しましょう。
有害物質による要因
放射線への暴露や薬物などの身体にとって有害な物質も奇形のリスクになります。放射線
放射線は胎児奇形の原因として考えられています。病院での検査でも放射線が用いられる様になっている現在では、診断のための低線量の放射線と胎児への影響について注目がされています。放射線の線量によって影響は変化しますが、胎児死亡(流産)、外表・内臓の奇形、発育遅滞、悪性腫瘍、遺伝て期影響などが心配されています。特に、外表・内臓奇形は器官形成期にのみ起こり、各器官でその細胞増殖が最も盛んな時期の照射に特徴的に発生する。100~200mGyがそのしきい値であると考えられています。
薬剤
特定の薬剤は胎児奇形の原因として考えられています。薬剤としては、抗生物質、抗悪性腫瘍剤、NSAIDs、ビタミンA誘導体などが薬剤の中でも特に注意が必要です。抗生物質の中には、歯牙発生期以降の使用で歯牙着色の原因になるものや腎臓の形成異常、聴覚異常になるものがあります。抗生物質の中で、妊娠時に安全性が確立されている抗生物質は少ないです。
次にNSAIDs全般は胎児毒性(胎児動脈管閉鎖など)の危険から妊娠末期の使用には注意しましょう。抗悪性腫瘍薬の多くは催奇形性があるので、投与中や投与終了4週間後までは避妊をしなくてはいけません。
また、妊婦が接種できるワクチンも限られています。麻疹や風疹の様な生ワクチンを使っているワクチンは胎児への移行と感染の可能性があるので妊娠中はそのようなワクチンを摂取してはいけません。妊婦が接種可能なワクチンは例えば、インフルエンザワクチンの様な有益性がリスクを上回る時と限られています。
アルコール
アルコールも胎児が奇形になってしまう催奇形性をもっています。アルコールが原因で胎児の発育の障害や奇形の発生の症状があるものを「胎児性アルコール症候群」と言います。妊娠中の胎児へとアルコールが伝わってしまうと、子宮内での胎児の成長が遅くなる子宮内胎児発育遅延や成長障害、精神遅滞や多動症の中枢神経障害などの症状が現れます。さらに、胎児の奇形として、特異顔貌、小頭症などの頭蓋顔面奇形、心奇形、関節異常などの奇形も発生することがあります。
特に、妊娠初期の身体のなかの臓器が形成される時期では、顔や内臓の器官形成に奇形が現れ、妊娠中期以降では、胎児発育遅延や中枢神経障害が生じると言われています。
タバコ
妊娠中の喫煙による奇形(心臓、中枢神経、腹壁など)の発生率の増加は認められていない一方で、唇裂、口蓋裂などの発生率が上昇するとの報告もあります。タバコが胎児に与える影響は本人のみでなく、配偶者や他の家族の副流煙にも注意しなくてはいけません。母親の疾患による要因
母親自身の病気や栄養状態も胎児の奇形へ影響をすることがあります。葉酸欠乏
葉酸が不足すると、二分脊椎や神経管閉鎖不全などの脳や脊髄の形成に影響します。葉酸はDNAの合成に必要な水溶性ビタミンです。妊娠初期の胎児の発育には欠かせない栄養素です。葉酸が多く含まれている食品はほうれん草、イチゴ、アボカドや鶏のレバーなどがあります。葉酸は食品からだけでなく、サプリメントで摂取量を補うこともできます。
葉酸をしっかり摂取することは妊娠の計画段階からしっかり心がけるようにしましょう。また、大量のアルコールは葉酸の吸収や代謝を妨げるので、飲酒には葉酸欠乏のリスクもあるということに注意が必要です。
肥満
肥満や糖尿病は胎児の奇形に影響します。先天奇形の神経管欠損や二分脊椎のリスクが増加することが知られています。他にも、心臓やその周囲の血管の奇形やへその緒に胃や腸が残ってしまう臍帯ヘルニアの危険性も高くなります。さらに、肥満にしばしば合併する糖尿病もこれらの奇形のリスクをあげるので、妊娠をするときには適切な体重コントロールや血糖値のコントロールなどが大切な役割を果たします。
遺伝による要因
遺伝子や染色体により、胎児奇形が発生する場合もあります。遺伝子や染色体は両親から受け継ぐものです。遺伝が奇形に影響を与える場合には、親の生殖に関わる遺伝子が放射線などの外的要因によって既に傷ついてしまっている場合や、奇形のリスクになる染色体を持っているキャリアである場合もあります。また、受精したときには両親の遺伝子には異常がなく、受精時や受精後の細胞分裂の段階で染色体に異常が現れる場合もあります。
ダウン症
染色体の数が原因で胎児奇形などの症状が現れる例としてダウン症について説明します。ダウン症は21番染色体の数が通常の2本ではなく余分に1本多い3本であることで発症します。特徴的な胎児の奇形や出産後の精神発達の遅れが症状として現れます。特に心臓や消化管の奇形の他に特徴的な顔、四肢の状態など身体の所見がみられます。難聴や白内障などの耳や目の症状が現れることもあり、症状は多岐に渡ります。ダウン症のような余分な染色体がある染色体の疾患は母親の妊娠年齢が高くなるにつれてリスクが上がることが知られています。
安心して出産するための新型出生前診断(NIPT)という選択肢
■妊娠中のリスク管理には出生前診断が有効です
妊娠すると心身が変化をはじめ、妊婦さんとお腹の赤ちゃんは様々な要因から病気になるリスクが高くなります。出生前診断は妊娠管理の上で有益な情報源となります。
胎児に異常が見受けられる場合には早期に準備ができますし、流産しやすいなどの特徴が見られる場合は個別の対応をすることが可能になります。
早期の発見には、出生前診断の中でも採血のみで高精度の検査が可能なNIPT(新型出生前診断)がおすすめです。
■八重洲セムクリニック(東京)・奥野NIPTセンター(大阪 奥野病院横)のNIPTはこちら(新型出生前診断)
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