妊娠中は、生まれてくる赤ちゃんに病気や障害がないか不安に感じる方が多いです。
このような不安を取り除くために、出生前診断を検討する人が、年々増加しています。
しかし出生前診断にはさまざまな種類の検査が存在し、それぞれ検査方法や検査を受けられる条件が異なっているため、注意しなくてはいけません。
そこで今回は、出生前診断にはどんな種類があるのか、また検査を受けるにはどのようなことに気を付けたらよいかについて、詳しく解説していきます。
赤ちゃんを産む前に行う「出生前診断」とは
出生前診断とは、妊娠中にお腹の中の赤ちゃんの状態を診断することです。
形態異常を確認するために妊婦検診や胎児ドックなどで行われる超音波検査、ダウン症などの染色体異常がないかを確認する検査などがあります。
出生前診断の種類と条件
出生前診断には、「非確定検査」と「確定検査」の2種類があります。
ここでは2種類の検査方法について詳しく解説します。
診断が確定できない「非確定検査」
非確定検査には、以下の3種類があります。
- 新型出生前診断(NIPT)
- 母体血清マーカー検査
- コンバインド検査
これらの検査は、妊婦さんの身体に負担をかけずに行えるものばかりです。
ただし、100%の精度でないため、検査で陽性が出た場合は確定診断を行う必要があります。
それでは、次項からは各検査の概要について詳しくご紹介していきます。
新型出生前診断(NIPT)
新型出生前診断(以下NIPT)とは、妊婦さんの血液を採取してDNAを解析し、染色体異常の有無を調べる方法です。
日本では2013年に導入された検査方法で、非確定検査ながら検査結果の精度が高く、近年注目を集めています。
ただし、多くの医療機関で、NIPTの受診制限を設けていますので事前に確認しておきましょう。
検査時期 | 10~22週頃 |
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主な検査対象の疾患 | ダウン症候群・18トリソミー(エドワーズ症候群)・13トリソミー(パトー症候群) |
検査精度 | 99.1% |
費用 | 20万円前後 |
■対象者
日本産婦人科学会の指針により認定を受けている施設で検査を受ける場合は、以下のどれかの条件を満たす必要があります。
- 出産予定日に35歳以上の妊婦さん
- 染色体異常のある赤ちゃんを妊娠・出産したことがある人
- 医師に染色体異常の可能性を示唆された人
- 両親のいずれかが均衡型ロバートソン転座を有していて、胎児が21トリソミー・13トリソミーになる可能性がある人
上記以外の妊婦さんでも、認可外の施設であれば検査が可能です。
母体血清マーカー検査
母体血清マーカー検査では、妊婦さんの血液を採取し、血液中に含まれる胎児や胎盤で作られている特定の4つの成分を調べることで、胎児の染色体異常がないか調べます。
検査時期 | 15~18週頃 |
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主な検査対象の疾患 | ダウン症候群・18トリソミー・開放性神経管奇形 |
検査精度 | 80% |
費用 | 2~3万円程度 |
コンバインド検査
コンバインド検査とは、超音波検査と母体血清マーカー検査の2つを組み合わせて胎児の染色異常がないか調べます。
両方の検査を用いることで、検査精度を高められます。
検査時期 | 11~13週頃 |
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主な検査対象の疾患 | ダウン症候群・18トリソミー |
検査精度 | 83% |
費用 | 3~5万円程度 |
診断が確定できる「確定検査」
確定検査は、染色体異常の有無をほぼ100%の精度で診断可能です。
ただし、妊婦さんの膣またはお腹に針を刺して羊水・絨毛を採取するため、わずかではありますが流産・死産のリスクを伴います。
上記の理由から、確定検査は非確定検査で陽性が出た場合のみ行います。
絨毛検査
絨毛検査は、腹部もしくは膣に針を刺して胎盤の一部である絨毛を採取し、その中にある胎児の細胞から染色体異常がないか調べます。
絨毛検査は羊水検査よりも早い時期に検査を行えます。
検査時期 | 11~14週頃 |
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主な検査対象の疾患 | 染色体疾患全般 |
検査精度 | 100% |
費用 | 10~20万円程度 |
流産・死産のリスク | 1/100 |
羊水検査
羊水検査は、お腹に針を刺し子宮から羊水を採取し、その中の胎児の細胞から染色体異常がないか調べます。
こちらも流産・死産の危険はわずかにありますが、絨毛検査よりはリスクが低くなります。
検査時期 | 11~14週頃16~18週頃 |
---|---|
主な検査対象の疾患 | 染色体疾患全般 |
検査精度 | 100% |
費用 | 10~20万円程度 |
流産・死産のリスク | 1/300 |
出生前診断におけるメリットと注意点
出生前診断を受けることで、赤ちゃんにも妊婦さんにもさまざまなメリットがありますが、同時に注意しなければならないことも多数あります。
メリット
出生前診断を受けることで得られるメリットには、胎児の状態を産まれる前に把握できるという点が挙げられます。妊娠中は精神的に不安定になりやすいですが、出生前診断で陰性が出れば安心して出産までの期間を過ごせるでしょう。
一方で陽性が出た場合は、赤ちゃんの病気について勉強する期間を設けられます。
疾患を持った赤ちゃんの出産にはリスクがあり、産まれてすぐに治療が必要になる場合が多いです。
出産に備えて設備の整った病院を検討するなど、赤ちゃんを迎え入れる準備ができます。
注意点
赤ちゃんが健康であることを確認し、安心したいという気持ちで検査を受けたけれど、陽性が出てしまい検査後どのような対応をすればよいかわからず混乱してしまうというケースも存在します。
ここでは検査を受ける前に知っておきたい注意点について、ご紹介していきましょう。
すべての先天異常がわかるわけではない
出生前診断を受けたからといって、すべての先天異常が見つかるわけではありません。
確定検査では染色体疾患全般を調べることが可能となっていますが、非確定検査では限られた染色体異常しか発見できません。
確定検査で陰性が出たとしても、100%健康な赤ちゃんが産まれてくるという保証にはならないことを心得ておきましょう。
検査を受ける施設を十分に検討する必要がある
出生前診断を行っている医療機関には、遺伝カウンセリングなどを行っていない施設も存在するため、注意しましょう。
遺伝カウンセリングは、検査の詳細や検査を行う意義などを専門の医師が説明してくるもので、ご夫婦でしっかり理解する機会として重要です。
中絶を選択しなければならない可能性がある
もしも検査の結果が陽性だった場合は赤ちゃんを産むか、中絶するかを選択しなければなりません。
赤ちゃんに病気や障害があるから産まないという選択をすることに対して、「命の選別にあたる」と批判の声があるのも事実です。
また、中絶が可能なのは妊娠21週目までとされているので、短い間に決断を下す必要があります。
あらかじめ、陽性が出た場合はどのような判断を下すのかをパートナーとしっかり話し合っておくとよいでしょう。
まとめ:出生前診断を受ける前に検査内容をしっかり理解しておこう
出生前診断を受けることで赤ちゃんが健康だと知って安心したいという妊婦さんは多いです。
しかし妊婦さんに負担のかかる検査もありますし、検査を受けられる条件が設けられている場合もあります。
また、検査結果によっては辛い選択をしなければならない可能性もあり、検査を受けなければよかったと後悔するケースも少なくありません。
したがって、夫婦で事前に赤ちゃんの将来について考えたうえで、出生前診断の受診を決めましょう。
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