不妊とは、妊娠を望む健康な男女が避妊しないで性交しているにも関わらず、一定期間妊娠しないことを指します。
日本産科婦人科学会では、この一定期間について1年というのが一般的であると定義しています。また、厚生労働省の調査では、不妊の心配をしたことがあるという夫婦は35%にのぼり、夫婦全体のおよそ3組に1組の割合となっています。実際に不妊の検査や治療を受けたことがある、または現在治療を受けている夫婦は18%で、夫婦全体のおよそ5組に1組の割合となっています。
さらに2019年に日本ではおよそ6万人が顕微授精を含めた体外受精により誕生しており、これは全出生児の7%にあたり、およそ14人に1人の割合になります。多くの方が妊活不妊治療を経て出産していることがわかるかと思います。
不妊の原因は何ですか?
それでは次に不妊の原因についてお話したいと思います。
不妊と聞くと女性に原因があると思われがちですが、WHOの調査によれば、不妊の原因は男性のみに原因がある場合と、男性女性両方が関与しているものを合わせると48%。実に約半数が男性にも原因があるということがわかっています。
不妊治療を行うにあたり、まずはじめに検査で不妊の原因を探っていきます。男女ともに行われる検査は、女性ホルモンや男性ホルモンなど各ホルモンの数値をチェックする内分泌検査と言われる血液検査。妊娠に影響を及ぼす感染症の有無を確認する性感染症検査があります。
女性の検査は、子宮や卵巣に異常がないかをチェックする超音波検査があります。また、卵管が詰まっていないかを確認する卵管疎通性検査で最もよく行われる子宮卵管造影法は、子宮から細い管を入れて膨らまし、造影剤を注入して子宮から卵管へと造影剤が広がっていく様子を見るエックス線の検査です。さらに、子宮頸管から分泌される頸管頸管粘膜と精子の適合性を確認する頸管因子検査として性交後に膣内と頸管粘液内の運動精子の存在を調べるフーナーテストがあります。
男性の検査は、精液の量や精子の数、濃度、運動率などをチェックする精液検査や、医師が直接見たり触ったりする診察があります。この診察では、男性不妊の原因としてよく見られる精索静脈瘤という精巣上部や周辺の静脈が拡張した状態の有無をチェックします。その後、検査の結果から原因となる病気がある女性不妊・男性不妊と原因が分からない機能性不妊の3つに分けられます。
不妊の裏に隠れている病気について
次に、代表的な不妊の病気についてお話したいと思います。
女性の代表的な病気には、感染症などによる卵管の癒着や子宮内膜またはそれに似た組織が、何らかの原因で本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し、発育してしまう子宮内膜症。生理が不規則だったり排卵に何らかの異常がある排卵障害などがあります。
男性不妊の代表的な病気には、精子を作る機能に問題がある造精精機能障害や精管という精子の通り道が塞がってしまっている。精管、射精の時に外ではなく膀胱側に射精してしまう逆行性射精などがあります。
不妊の原因となる病気が見つかった場合は、手術療法や薬物療法が行われます。その後、原因となる病気を治療したあとも、不妊が続く場合や原因が分からない機能性不妊の場合にいよいよ不妊治療がスタートします。
不妊治療の2つの方法
不妊治療は、一般不妊治療と生殖補助医療の2つに分けられます。
一般不妊治療には、クリニックで超音波を使って排卵日を診断し、性交のタイミングを合わせるタイミング法。綺麗に洗浄した精液を注入器で子宮の奥の方に注入する人工授精、飲み薬や注射薬で卵巣を刺激して排卵を起こさせる排卵誘発法などがあります。排卵誘発法は通常、タイミング法や人工授精と組み合わせて行われる事が多いです。
次に、生殖補助医療についてです。生殖補助医療には、卵子と精子を取り出して、シャーレというお皿の上で受精させてから子宮内に戻す体外受精や卵子に注射針で精子を注入して受精させ、子宮内に戻す顕微授精などがあります。一般不妊治療でタイミング法を6回ほど行っても妊娠しない場合は人工授精、人工授精を5.6回行っても妊娠しない場合は、次のステップとして生殖補助医療へのステップアップが進められます。
通院スケジュールと費用について
不妊治療の通院スケジュールについてお話したいと思います。
タイミング法や人工授精などの一般不妊治療については、診察時間は1回あたり1時間から2時間程度、月に2日から6日の通院が必要になります。さらに、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療を行う場合、女性は特に頻繁な通院が必要となります。診察時間は1回あたり1時間から3時間程度、月に4日から10日程度の通院が必要になります。
一般不妊治療、体外受精や顕微授精共に男性は通院が必要なかったり、あっても半日です。手術を伴う場合でも1日程度となることが多いようです。
次に、不妊治療にかかる費用についてお話したいと思います。不妊治療にはお金がかかるとよく耳にするかと思います。不妊治療の中には保険適用のものと適用外のものがあり、治療法や医療機関によって費用が異なります。タイミング方は1回数千円ほどとなります。ホルモン療法は保険適用と自費診療によって異なるため、1回100円から3万円前後と幅広いようです。人工授精は1回1万円から3万円ほど、体外受精(凍結胚移植)は1回30万円から40万円ほどです。顕微授精(凍結胚移植)は1回当たり45万円から55万円ほどです。2022年4月から不妊治療が健康保険適用となり、3割負担となりました。保険適用には年齢と回数制限があるので、必ず確認しておきましょう。また、自治体によっては助成金が給付される場合がありますので、今住んでいる地域の役所に確認しておくといいです。